劇場公開日 2022年1月21日

  • 予告編を見る

「何を見せたかったんだろうか。」さがす talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0何を見せたかったんだろうか。

2024年3月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

自殺願望のある人を「救済」するために、その自殺を幇助するー。
それを、あたかもビジネスのように割りきる山内と、苦悩しながらも、この犯罪(殺人…少なくとも自殺関与罪)に手を染めて行く智とが、好一対だったと思います。
そして、最後の局面では、犯罪の発覚を恐れる智が、かえって山内を圧倒して行くー。

経営が行き詰まってしまったという智の卓球場ですけれども。
そういう事態を回避するため、おそらくは智は最大限の努力を尽くしたことでしょう。愛娘・楓のために。

それだけに、智の転落のプロセスが、何とも胸は痛いく、生きる道を踏み外していく様を演じた佐藤二朗の熱演は、大きな加点要素でもあったとは思います。

しかし、実際に起きた事件をモチーフに構成された作品という本作は、その「実際に起きた事件をモチーフにしている」ということに、いわば寄りかかりすぎて、映画作品としての「何かそれ以上のもの」…智が巻き込まれていったという「実際に起きた事件」を映画化してまで製作陣が世に訴えたかったもの、観客に見せたかったもの、その「何か」が、明確には浮き彫りにはなっていなかったと思います。評論子には。

その点では、いささか物足りないような思いも、実は払拭することができない一本でした。
それゆえ、良作としての評価に留めておきたいと思います。評論子としては。

(追記)
それにしても、本当に楓を演じた伊東蒼の熱演は光ったと思います。
手持ち金の不足で万引きを働いたといえば必死の形相で駆けつけたり、父の消息に繋がりそうな人物を見かけると、これまた必死の形相で追いかけ、ついには父の失踪の実相に繋がる父のスマホを手にいれるー。
若い女優さんでもあり「これからが楽しみ」という大方のレビュアーのご意見に、評論子も、諸手を上げて賛同します。

talkie