幻滅のレビュー・感想・評価
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「裕福でない限り運命は避けられない」
19世紀のフランス。詩人としての成功を願っていた印刷工のリュシアンは、侯爵夫人のルイーズに愛され二人はパリへ。しかしおのぼりさんのリュシアンは、社交界で笑いものされてしまう。そこで新聞記者のルストーに出会い、リュシアンはその文才でのし上がり。
純粋だった青年が成り上がっていく顛末という物語で、原作は文豪バルザック。当時の享楽と虚飾にまみれ、かつ情熱的な風情が興味深かい。称賛と批判が、実は表裏一体となって表現されるところが楽しいです。貴族を敵としつつ、自らもそれになろうとする様が見苦しい。
【”人間喜劇&悲劇。”1800年代に書かれたとは思えない現代社会のマスメディアのフェイクニュースなどの虚飾塗れの姿、及び様々なヤラセを想起させる社会派人間ドラマ。当時の衣装、意匠も秀逸な作品である。】
■19世紀前半の巴里の郊外。
詩人を夢見る田舎の青年・リュシアン(バンジャマン・ヴォワザン)は、貴族の人妻・ルイーズ(セシル・ドゥ・フランス)と共に上京するが、巴里の社交界の虚飾と自らの身分に安寧としている鼻持ちならない人々から馬鹿にされて、破局する。
失意の中、新聞記者となった彼は、金のために魂を売る同僚ルストー(ヴァンサン・ラコスト)に感化され、欲と虚飾と快楽にまみれた世界に身を投じていく。
さらに、王制派と自由派の対立に巻き込まれる中、リュシアンはイエローペイパーに記事を書き、一時期のみの虚飾の栄光を手にするが、浪費癖の為に身を崩して行く。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・無茶苦茶、シニカルな物語である。田舎からパリに出て来た多少、文才がある愚かしき青年リュシアンの一時期の栄光と、挫折。
・リュシアンは、女優コネリーと良い仲になるが、”サンガリ”という、舞台初日にサクラ”を使い、拍手喝采を脚色したり、ブーイングを脚色する男に翻弄される。
ー ここは、今でも通用するのではないかな・・。-
・だが、小説家ナタン(グザヴィエ・ドラン)のみがリュシアンの文才を認め、虚飾の世界を冷静に観て居る姿が印象的である。
ー もう、ナタン=グザヴィエ・ドランに見えてしまったよ。リュシアンはナタンの新作を読み、その文才に惚れ込むが貶す書評を書いてしまう。だが、その後キチンとした書評を別の新聞に書くのである。リュシアンの浅はかさが垣間見える。-
・リュシアンは私利私欲を虚飾で隠した巴里の社交界に呑み込まれ、全財産を失う。更に、女優コネリーの舞台を”サンガリ”の寝返りにより、散々な出来にさせられ、元々肺が悪かった彼女は、失意のため体調を崩し、棺桶にも入れられず埋葬される。
<そして、全てを失ったリュシアンは故郷に戻り、幼き頃良く行っていた湖に久しぶりに行く。
彼は水の中に身を沈めながら、巴里の虚飾に塗れた人たちの姿と、それに呑み込まれて行った愚かしき自分に対し、【幻滅】の念を抱くのである。
今作は、現代社会でも十二分に通用する物語なのである。>
幻滅のあとに人生を見つめ直す
年上の人妻への思慕からのパリへの駆け落ち、そして社交界デビュー。何とも華やかな話。しかし、主人公が自信過剰で特別を求める世間知らずな若者となると、破滅は必至。後はいつその時が来るのかと観ているうちに、作品に引き込まれてしまった。
パリの街の猥雑さ、譲ることを知らぬ人間性、ウォール街真っ青の拝金主義者たち。清々しいまでに欲望に忠実。
それを見下ろす暇を持て余した貴族たち。澄ました顔をしながら、獲物を美味しく料理する為に手間を惜しまない。金持ちの暇人ほど始末に悪いものはない。
そんな人々の中で破滅を迎えたのが、純粋に美を求めたコラリーであったことは見ていてとても辛かった。
親に売られ、金持ちのパトロンを捨てた彼女には主人公以外何もない。それでも、お金は働いた対価であるとしルイーズのお金を受け取らず、稽古に励んでいた。
一方、主人公は目先の金の為にルイーズと寝る。コラリーの舞台の成功の為ではあるのだが…。まだ芸術家としてパトロンと関係を持ち続けるために寝ていたほうがスッキリする。
コラリーを破滅させた新聞社は、その後貴族たちによって摘発される。そして微笑む貴族。しかし、内容からして7月革命の前夜なのだから、貴族たちも間もなく幻滅の渦に飲み込まれたのだろう。
結局、挫折し故郷に帰った主人公だけが生き残ったようで、当初の予想を見事に裏切られた。そして、そんな彼を苛立ちながらも憎めないのは、自分を重ねてしまうからだろうか。果たして彼の人生の第二幕は如何に。
どの役者も素晴らしく、観終わった後にじわじわくる。思わずフランス史を見直したり、バルザックを調べたりしながら反芻してしまった。
Illusions perdues
普通は自分に対して「幻滅する」とは言わない 他人に対して、又は他人の評価として使用される言葉だ
でも、ラストの湖に裸で半身浴で佇む、目の下の黒アイシャドウは正に、自分に対しての"幻滅"以外に表現出来ない それは全て、早熟すぎた自分のかりそめの頭脳だったか、それともそれさえも揶揄われた壮大な『どっきりカメラ』なのか、フランスならではのド緊いアイロニーに飛んだ作品である 映画上の演出だからと思うが、あのワチャワチャ感は、以前観賞した『パフューム』に近い世界観と酷似した世界観である その中でお互いを共食いしながら、しかし強かにしなやかに立ち回る登場人物達の一種の力強さをまざまざとスクリーンに描く演出である
まさにこのレビューサイトに通底する物語でもあり、とことん興味深さは尽きない
観賞していて、この登場人物達の何十分の一でも要素が有れば、自分はもっと強かに生きていけたのではないかと、そもそも死にたくないから生きているとすれば、セーヌ川の底に沈む沢山の死体側の人間である自分は、唯々羨望の眼差しで作品を鑑賞した
人間はここまで力強く生きることが出来る・・・ 自分には不可能だ・・・(泣
バカな男の人生を…
年上の貴族?女性を好きになり、愛の逃避をした世間知らずの男の話
怖いもの知らず知らずで、上手く波に乗ったのも束の間
この波はエンドレスで続くと思ったのか、浪費三昧 気がつけば資産は没収され、母方の貴族名にも戻れず、田舎に出戻った勘違いも甚だしい男の話
ポエマーにはこんなキャラが多いのかと幻滅
(オンライン試写会は一律ネタバレなしでもネタバレ扱い)当時のフランスの歴史事情があると有利?
今年103本目(合計754本目/今月(2023年3月度)38本目)。
オンライン試写会で視聴。
19世紀フランスの社交界とジャーナリズムがテーマの映画です。
やや混乱期にあったと思われるその時期の主人公の成り上がりとなり下がりの「極端の差」のドラマが良かったです。
ただ、当時のリアルのフランスの歴史事情を「若干」参照しているところがあるので、そこの部分は要注意(高校世界史くらいあれば大丈夫)かな、というところです。
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