パラレル・マザーズのレビュー・感想・評価
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歴史に包まれて
この作品で観るのは, 歴史の包容力だ. 赤子の取り違いというシナリオと思うと, 頭の中で参照したくなる他作品も少なくない. こういった筋書きの映画は, 運命のイタズラで苦しむ家族をさいご救済する設定が肝である. 本作品では, その手を差し伸べてくれるのは”歴史”だ. iPhoneやgoogleが最初の相談相手だったとしても. 私たちが, 無関心になりつつある歴史だ. “生物的”には母子ではないふたりが,ともに虐殺の記憶を消化する機会に立ち会うことを許してくれる. 家族という概念を拡張してくれる歴史の振る舞いを可視化してくれる作品だった.
新たな命を授かる経験をするふたりの母. このふたりが, 一世代ほどギャップがあるのも本作の見所である. 早すぎる受胎へのとまどいや自国の過去への無関心さが垣間見える描写は, こちらも少し肩身が狭くなってしまった. 歴史への無関心さが及ぼす可能性を想像することにも本作は示唆的だった. ここで並行(パラレル)なのは, ひとりの赤子に寄り添うふたりの母のことだけではない. 多様な表裏関係を探しながら鑑賞してみてほしい
予告からは全然想像しなかった方向に
サイコサスペンス風なのかなぁと思いきや違った。
家族への記憶(受け継ぎ)と愛のストーリーってところか?
追記
この映画は女性視点で見る命の記憶と慈愛。
他の感想を読んで、モヤモヤとした感想が”そうそう”と合点がいった。
視点が散漫な印象だが良作
同じ日に、同じ産院で、共に女の子を出産した2人の女性。1年後、写真家のジャニスは元恋人である娘の父親に再会するが、「自分の娘とは思えない」と告げられたことから、ある疑念を抱く……。
2人の母親と娘たちだけでは終わらず、未だに人々の心に暗い影を落としているスペイン内戦の後日談も盛り込まれ、“家族”という関係について深く考えさせられた。
主演したペネロペ・クルスが圧倒的な存在感を見せつけ、目が釘付けになった。
生涯かけて描くテーマをさらに掘り下げて
アルモドバル作家主義 × 母の物語 = 先祖から子供へ世代の移り変わり。母と娘のその先、奥へ。前作『ペイン・アンド・グローリー』で私的な物語を描いたペドロ・アルモドバル監督が自身のキャリア/フィルモグラフィーにおいて描き続けてきた大きな割合を占めるテーマに帰還。厳密には『P&G』も母についての物語ではあったが…。主演を務めるのはもちろん彼のミューズ=ペネロペ・クルス。だけど忘れてはいけない歴史があったということも掘り下げるスペイン内戦。(両監督ともそこまで詳しくないが)例えば大林宣彦監督の晩年のように、近年そうした戦争の記憶という部分への比重が大きくなっている気がする。画は赤を基調にした色彩感覚で魅せてくれる。それ故か、今まで気になったこと無かった気がするが、背景が合成みたいに見えるときがあった。
いゃー、感心しました。感動とは違うけれども。
週刊誌の映画評で褒めてあったので鑑賞してみた。
映画評の通りであった。高評価も納得である。
正直、私の好む描き方ではない。私はいかにも物語らしい話が好きだ。ビィスコンテイ映画のような。
冒頭、何故埋葬地の発掘調査の話から始まるのか少し疑問だったが、家族の物語から人類の不幸な歴史まで話を持っていく。親子の血の繋がりを超えて(でも、この映画の肝)、人類の歴史まで射程に入る壮大さを持っている。感心した。
バッツリと切り替わる編集
私が子供だった70年代、題名こそ覚えていませんが「事件物」のスペシャルドラマに多かった印象のある題材として「身代金を要求する誘拐」と「子供の取り違え」があります。要するにこれらは「古典」と言っていい題材なのですが、アイデア次第ではまだまだ新しい作品も作られ続けています。
例えば邦画だと、まだ記憶に新しい是枝裕和監督の『そして父になる(13)』。
或いは、パレスチナ問題をそのまま取り込んだ衝撃作『もうひとりの息子(12)』。
そして、本作『パラレル・マザーズ』も後年まで記憶に残るなかなかの良作と感じます。
スペイン内戦と歴史記憶法の話に始まり、ジャニス(ペネロペ・クルス)の曽祖父母にまで遡るファミリーツリー。そして曾祖父たちの遺骨採掘のことで繋がる新しい関係アルトゥロ、アナ、またその家族たち、そして生まれ来る娘たち、とそれぞれの関係性がどれも「ドラマ」として面白く、次々と起こることに夢中になります。
そんな展開を活かす意外な「良さ」が、起きていることの衝撃に対して「余韻」を殆ど残さない、バッツリと切り替わる編集。そう聞くとなんだか勿体ないと思うかもしれませんが、むしろ、このテンポ感がペネロペの名演と相まって、悲しみを乗り越え、未来への希望を感じさせてくれます。
そして、最後のシーン「共同墓穴発掘現場」の様子とそこに集う人々の表情が、繋がりと絆を強く感じさせてくれます。
流石、名匠ペドロ・アルモドバル監督の仕事、、とか言って私実は、同監督の古め作品はまだ未見のものが多いです。すみません。でも取り敢えず今作は、好みの一作でした。恐れ入りました。
曾祖母から祖母から母から私へ、私から娘、そして全ての女性へ
早く陣痛が来るように胎児が下に降りてくるように病院の廊下を二人並んで歩いている様子がかわいくて笑った。硬膜外麻酔で産むからね(当然!陣痛も出産も痛えんだよ、死ぬほど!その麻酔だって陣痛を抑えるだけ!それだけでも有り難い!)、模様がついてる可愛いのをお揃いで着て痛い陣痛をのがすための呼吸はこうよと励まし合う二人。二人部屋っていいなあ。痛くて苦しくて辛いけど仲間がいてよかったねと心から思った。笑えたのはここまで。それからはずっと泣きながら観ていたかな、いやそんなわけないか。とてもいい映画だった。展開早く構成良く。
アルモドバル監督の映画をまた見なおそう、少なくとも「ライブ・フレッシュ」と「オール・アバウト・マイ・マザー」から。アナのママ、テレサも40代になって娘時代からの夢である女優になった。夢を捨てない。どんなに辛くても伝えるべきことは伝えるべき人に正直に伝える。隠さないし嘘で塗り固めない。歴史も記憶も消してはだめだと辛抱強く伝える役割は女性。なぜ女性?でも女性なんだ。大文字の歴史でなくて小文字の歴史を担っているのは女性だから。
おまけ
あれかこれか、ではないと前から思っています。息子からも教わった。あれかこれか、あれもこれも、あれでもなくこれでもなく、もある。私はその若い人たちをわかりたい。わかる自信がある。だから大丈夫だと若い人たちに伝えたい。
生と死なんだけど、、、?
生と死と赤ちゃんの取り違えというかなり重いテーマの映画なんだけどツッコミが甘いと思う。重いテーマをサラリと演技させようとしたんだろうけどそれでも監督がなにを伝えたいのかかなり疑問。さらにエンディングはあまりにありきたりでガッカリ😮💨
壊された家族と壊れている家族
スペイン内戦で祖父・曽祖父を失ったジャニス。望まれない子供として生まれたアナ。壊された家族と壊れている家族に育った2人が、偶然にもシングルマザーとして同じ病院で同じ日に同じ女の子を出産する。
取り違えられた赤ちゃんをめぐって、ドラマは展開していくが、強烈ないざこざがあるわけでもなく割と淡々と進んでいく。
ストーリーに惹かれる要素はあまりないが、ヴィヴィッドな色が目に飛び込んでくるようなシーンが多く、視覚的には満足。カメラマンであるジャニスが広告用の被写体を撮影するシーンはめちゃくちゃいい。
『歴史の記憶法』という法律がスペインにはあるらしい。フランコ政権に弾圧を受けた人々の名誉を回復して、政府が補償をする内容の法律だが、法律のネーミングがすばらしい。悲惨な内戦を国の歴史として記憶し、二度と過ちを繰り返さない。そんな意思が感じられる。
拍子抜けするシーンにこそ真意がある
ペドロ・アルモドバル監督によるシスターフッドムービーの集大成!
過去作のテーマの根底も明らかになります。
拍子抜けするシーンにこそ真意がある。
絵画のように美しいブラックアウトが素晴らしい。
これまで監督が描いてきたシングルマザーは、女性たちからのサポートを受けている印象がありました。
出産や育児が加わった瞬間に共同体としての結束が強まる感じ。
出産育児が一人では出来ない大仕事だとわかっている者同士の助けあいが胸熱でしが、その決断の早さにも驚かされてきました。
今までの関係を土返しにして手を差し伸べる女たちに、ちょっと拍子抜けするような場面も多々あり…
たとえば、相入れない関係の筈の二人が、出産を知った瞬間に協力者になる展開とか。
今回だと抱っこ紐のシーン。アッサリ受け入れすぎて、もう一押し無いのか?と拍子抜けしました。
でも、それらの拍子抜けシーンの数々は全て、自分の感情より子供のことを第一に考えているから。
過去作の決断のスピードも、ここにあったのか!
個人ではなく、一つの命をみんなで産み育てる感覚。
子供を産み育てることは未来を作ること。
出産の経験があろうが無かろうが、実の子であろうが無かろうが、みんなで産み、みんなで育てる。
この世に生を受ける全ての存在に、無条件の愛情を注ぐ女たちの姿が浮かび上がります。
そして本作では、その女たちの助けあいの根底にある理由がクッキリハッキリ描かれていました。
内戦で男達が死に、女達は協力しあって子供達を育てるより他なかった。
死んでいった者たちが生きた証を未来へ繋ぐ為にも命を絶やすことは出来ない。
そんな必死の思いで子供を育てることが、理不尽な殺戮に屈しない女たちの戦いでもあった。
そして更に、この“女だけで協力しあって生きるしかなかった”経験により
“女だけで協力しあって生きていける”ことが証明されてしまった。
シングルマザーを選んだ時点で男をあてにしていないのですが、内戦で男をあてに出来なかった女たちは、むしろ女だけで生きていく方が楽なことを知ってしまった。
争いと破壊を繰り返す男より産み育てる女が未来を作っていく。
女の敵を女に仕立て上げたのは男どもだ。女だけの社会ならキャリアか子供かの二者択一に苦しむこともない。
悪いけど、セックスの相手だって男じゃなくても良い。
(とくに本作ではこの二つの時代の変化を強調していたと感じます)
女性は未来を生み出すことが出来る。
男たちの骸が横たわる大地を踏み締めて、女たちは歩き続ける。
これからの社会をリードするのは女性的な感覚であり、独裁政権や男性的な感覚との訣別が監督からのメッセージだったように感じました。
アルモドバルいつもの、緻密に計算しつくられたビジュアル主義...
アルモドバルいつもの、緻密に計算しつくられたビジュアル主義で、とにかく絵面が美しい。
アディーチェのスピーチ「We should all be feminists」(DIORのTシャツ)をペネロペが着ていたのだが、小道具や背景に仮託させながら多様な女性の生き様を描いていく。と同時に、DNA鑑定で個人特定することを寓話として用いながら、スペイン内戦についてハッキリと断罪して見せる、素晴らしき力作。
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