「自分の国の歴史を知るべき」パラレル・マザーズ Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の国の歴史を知るべき
名前も刻まれない共同墓地。集団墓地は人々を〝存在しなかった〟ことにする。ジャニスは冒頭で祖先の写真を見ながら名前を読み上げる。親族に敬意を払い、彼らに名前を返還することで人間性やアイデンティティを取り戻すことを誓っているようだった。
迫害された人々に対して人権侵害の不当性を宣言したのが歴史記憶法であり、遺骨鑑定は名誉を回復する権利の承認。
一方、同じDNA鑑定でも親子鑑定は情愛を切り裂く残酷な承認。しかしジャニスは自分の在り方を妥協しなかった。
父親のわからないレイプ被害者のアナ、その不当性を無かったことにしたり、セシリアの本当の母親を〝存在しなかった〟ことにするわけにはいかない。
ジャニスは共和党の祖先をもち、アナの母親はファシズム勢力の祖先をもつことが示唆されている。二人が遺骨発掘に同席する姿に、監督の国民の和解の希望を見た。
アドモドバルの十八番「母なるもの」を通して伝わるメッセージ。声なき歴史などない!女は口を閉ざさない!
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