ある男のレビュー・感想・評価
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#80 リアルなりすまし
ネット上なら誰でもなりすましできるけど、リアルワールドでは中々難しいよね。
でも日本には戸籍制度があるから、本人さえ同意すれば簡単に他人になりすませちゃう。ある意味そこは問題。
みんな本当のことを言っているのかどうかわからない中、刑務所内にいる囚人が言ってることが実は1番リアル。
特に1番まともそうに見える弁護士の家庭が1番ひどい。
うその世界でほんのいっときでも本物の幸せを感じれたニセ谷口の人生のほうが良かったのでは?
見応えある秀作
原作は未読である。子供は親が誰であるのかを知らずに生まれ、成長と共に知ることになる訳であるが、犯罪者の子供は犯罪者なのかというのは古くからの命題であり、聖書の原罪の根拠にもされている。しかし、親が犯した犯罪で子供が裁かれるのは理不尽である。同じことは在日の者にも言えて、好きで在日の子供に生まれてきた訳ではないのに日本人からのバッシングを受けるのは理不尽だと言いたがっているように見えた。
しかし、親が犯罪者である場合と在日である場合は全く事情が異なるものである。犯罪者は犯行の手口を我が子に教えたりはしないが、在日の家では日本人に対して終戦以降代々受け継がれて来た根深い恨みつらみが物語として継承されている。また、犯罪者の形質が遺伝することは考えにくいが、在日の遺伝形質は間違いなく伝わっている。その相違は明確に区別すべきである。
他人の戸籍を勝手に詐称するのは、相手が存命の場合は極めて難しいが、死亡した者になりすましたり、あるいは戸籍を変えたい者が二人いる場合に交換というのはあり得る話で、戸籍には顔写真などが付いていないのでそうした抜け道が可能性として残されている。将来的には DNA 型も併せて登録するとかにしなければ不正を完全には防げないだろう。
犯罪者の父親譲りの風貌に絶望しながら、それでも懸命に生きていこうとした者の哀しさと、正体不明の人物を徐々に明らかにしていく展開が非常に見応えがあった。真相に行き着くまでの展開に無理がなく、実に丁寧な物語の進行には、見る者に深く納得させるものがあった。見事な脚本だと思った。
窪田は、父親のトラウマを抱えながら懸命に生きる人物を好演していた。ボクサーとしての身体の鍛え方も見事であった。妻夫木は、普段は上機嫌で物腰も柔らかいが、一旦キレると別人のように凶暴になるという在日らしさを実に良く演じていた。安藤は少し表情に乏しく、どんな場面でも同じように見えてしまったのは残念だった。真木は適役だったというべきだろう。柄本は相変わらずの怪演だった。
非常に濃密な映画で、見応えがあった。ただ、音楽が凡庸過ぎたのが残念だった。
(映像5+脚本5+役者4+音楽1+演出5)×4= 80 点
上手な嘘は人を幸せにする
見応えあり
ある男に涙する映画体験
10月27日の完成披露試写会にてひと足早く鑑賞することができました。
自分だけではどうにもできない生まれもった境遇や立場、親子関係‥。とてつもない見えない何かと闘う苦しさ、向き合う難しさに胸を引き締められました。
それはお金持ちだから、家業が安定しているから、‥。第三者からの視点と当事者の見方のギャップの大きさ。
当事者の人生を辿る中でそのギャップの暗闇に初めて明かりが灯るのだと。
だからこそその当事者は幸せを手に入れた時に"どのようなこと"を"誰"にするのか。全てが解かれた時にその尊さに涙しました。
でも、これまで紡がれた嘘、真実を全て紐解くべきなのか。
里枝の抱える複雑な心情、想いに何度も考えさせられました。Xと過ごした日々、自我が芽生えている悠人と幼き花へのケア。何が正解なのか。正直一回では噛み切れないほどの見応えがあります。
小見浦と接する中での城戸の弁護士としてのあり方や人生観の変化。
全ての人にそれぞれの人生があって、理想や夢、想いをもって歩んでいく。そんな当たり前なことが当たり前じゃなく奇跡の連続だと。
それは"どんな形"であろうと紡がれていく。
久しぶりにこんなにも熱いヒューマンドラマに出逢いました。
ミステリー要素で少し怖い描写や音楽があります。でも、それに勝る熱い感動と涙があります。
目の前で巻き起こる現実にどんな感情を抱くのか。どの登場人物も濃くて、ある想いがあります。
寄り添う大切さ、気づくことの重要さ。
早くも友人と感想を分かち合っています。それぞれ感じたその価値観の違いが更にこの映画に良いスバイスを効かせてくれると思います。
来月の公開である男に
また出逢えることがとても楽しみです。
「ある男」試写。平野啓一郎の唱える「分人主義」を体現するかのよう...
1人の人間として生きること、とは
映画の冒頭、ルネ・マグリットの男の後ろ姿の向こうに同じ男の後ろ姿が鏡に写したように、だが並列して描かれている不思議な作品がクローズアップされる。
愛する子供の死の果てに離婚し、遺された幼な子と共に故郷の文具店を継いだ里枝。
その後に出会った孤独な男と再婚し、1児に恵まれたものの、幸せな家庭に突然の夫の死が訪れる。
その後、愛されつつ逝ったその男はその名を語る別人だったことが判明し、悲しみの中、里枝の家庭に訪れた混乱を描く。
別人を装わざるを得なかった、悲しい人生を決定づけられた男の生涯は一体何だったのか。
人が別の人になることができてしまうという特殊な人生をあえて選び、そうすることによって、本人にしか理解できない、1人の人間として生きることに新たな希望を持つことができるという複雑な心理がそこにある。
弁護士の城戸役の妻夫木聡は、役者としての光が人一倍で、存在するだけで見入ってしまう。
大祐役の窪田正孝、ボクシングジム会長役のでんでんとの師弟としての絡み、ファイティングシーンの演技は迫力ある場面を作っている。
反面、里枝役の安藤サクラは、原作とはイメージが異なったばかりか、「万引き家族」の時と同様、表情が乏しく粗雑さが垣間見えるのに、評価が得られている不思議な役者で、私はあまり評価しない。
大阪刑務所の囚人・小見浦役の柄本明は、怪演といえるが、なぜか無茶苦茶な関西弁で違和感が強い。
城戸の妻・香織役の真木よう子は原作のイメージを踏襲し、美涼役の清野菜名は、原作に負けている感あり。
本作は原作者・平野啓一郎の描くそれぞれの濃いキャラクター設定が映画でどのように描かれるか、が興味の対象にもなるが、幾分違うタッチで描かれるも、軸となる心理面や、簡単に他人を装ってしまう怖さのようなものが見事に描かれている。
久しぶりの良作邦画
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