ある男のレビュー・感想・評価
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妻夫木やるなあ 真木よう子とちくるてんなあ
原作未読
面白い!推理小説的にも論理がしっかりしている。
妻夫木聡、内面に押さえつける演技も絶好調。
重くなりがちな話を小藪が関西弁で和ませる。
さらにこの作品のテーマを背乗り、在日、拉致と絡め
これをニホンガーに結び付ける作法だと白けてしまうが
監督曰くデリケートな部分を敢えてオープンにして
多様性を表現したと。
この監督の心意気に賛同!
80点
3
Tジョイ京都 20221118
パンフ購入
なんかありそうだけど
原作は読んでいないので映画としての印象になるが、石川慶とプロモーション用の装丁から愚行録や吉田修一や李相日のようなものを予測&期待して見た。が、登場人物が入り乱れ、追えなくなっていく。リアルなタッチだが話や人物はメルヘン。罪悪感と在日のパラメータを同線上にしようとするが乗らなかった。
いまの日本映画は悪人が起点になっている。韓国ノワールの台頭と悪人によって多くの日本の映画監督が李相日ぽいムードを真似しはじめた。
多数の日本映画のリアリティ表現に李相日の存在が見えてしまうことに加え、瀬々や三島や荻上やsabuなど“人間の深淵を見つめています”ヴァイブを発する李相日ぽい作風に軌道修正した俗物も多かった。
が、石川慶は別の経路から来た人で来歴にポーランドのウッチ映画大学で学んだ──とあり、デビュー長編からして秀作の愚行録、日本映画臭のない映画監督といえると思う。
因みに日本映画臭とは画からにじみでてくるクリエイターの自我のこと。俺様気配、昭和ポルノ、アート系な驕り、わかるひとにはわかるムード・・・。
映画そのものよりも前面に承認欲が見えてしまうことを日本映画臭と言う。(「言う」つってもひとりで言っているだけだが。)
これは日本映画臭がなくお涙でもなかったから安心して見ていられたが、焦点が定まらず雑然とした印象が拭えなかった。
また、ある男(窪田正孝)が積極的に母性本能をくすぐりにきているのが釈然としなかった。
おとなしい林業従事者。絵を描くが、絵はびみょう。「鏡に殺人鬼の親父を見いだして動揺するから」鏡を見るとうろたえる。
男目線で見れば、ある男が戦略的愚直をつかって女を釣ろうとしているのは明白だった。実際口べたな雰囲気で文具店に通い詰め寂しげな寡婦をゲットする。筋書き上仕方ないものだったにせよ、いかにも母性本能をくすぐりそうな窪田正孝が母性本能をくすぐりそうな役をやっているのがイヤだった。
つまり、ある男は犯罪者の親を背負った不幸キャラを演じている男であって、トラウマに侵犯された男ではなかった。ように見えた。
逆に清涼剤になっていたのが小薮千豊。少ない登場シーンだったが出てしゃべるだけでそこをなんばグランド花月に変えた。陽性、のっぽ、野太い声、ムダにするどい眼光。人情味にあふれ、またハッキリ5かマネーの天使でも見るか、という気分にさせた。
韓国へ行き「日本人であることを恥ずかしく思う」という“マーケティング”をしたことがニュースになっていた女優も出ていた。
この映画の在日設定も、肉親が犯罪者であることの罪悪感と、在日に対する日本人の罪悪感を交叉させるつもりがあったのかもしれない。
いずれにせよ在日が絡む話は日本では高評価へつながる。
はたして映画は多数の賞をとった。
世には正装して出来レースを発表する形骸プライズがある。日本アカデミー賞もそれ。カンヌやサンダンスのように、あるていど民意や審査基準が推察できないプライズは、庶民にとって意味がない。がんらい日本は旧弊で権威主義な映画製作システム自体に問題があり、コンペティションが成り立つような成熟した業界ではない。
石川慶は日本映画臭のない監督だが、この映画はプライズをとるほどのものではなかったと思う。だが第46回日本アカデミー賞にて作品、監督、脚本、主演男優、助演男優、助演女優、録音、編集、の8つの最優秀賞を受賞したとのこと。
編集とか録音とかって選考理由あるんだろうか。米アカデミー賞に寄せて創設したものなんだろうが、プライズを監査する第三者がいるんだろうか。内輪で決める映画プライズってほんと意味ないと思う。
2本立て2本目。死んだ夫は別人だった。ストーリーはなかなか面白かっ...
名前と自分と
名前を変えた夫と結婚する時、家族同士の顔合わせとか本籍の住民票とかいろいろどしたの???と突っ込みたいところはあったものの、その辺もうまーいことやれる人が本当にいるんだろうな。
自分の知人がほんとうにその人なのかは、私には永遠にわからないのだ。
前半は安藤サクラ、中盤は窪田正孝、後半は妻夫木聡の主人公が変わっていくタイプの流れ。
イケメン弁護士で逆玉に乗った妻夫木だって美人妻に浮気されて最後は谷口を名乗ってバーで自分じゃない人生を演じる。誰だって自分以外になりたい時があるよね。
自分が誰であるかなんて超フワフワだってことは、結婚して苗字を変えるタイミングで痛感した。
私が私であることは私だけが知っていることで、私の嘘も私の秘密も、私しか知らない。
弁護士の城戸(妻夫木聡)は、 かつての依頼者・谷口里枝(安藤サクラ)から、 亡くなった夫・谷口(窪田正孝)の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。
動画配信で映画「ある男」を見た。
2022年製作/121分/G/日本
配給:松竹
劇場公開日:2022年11月18日
妻夫木聡
安藤サクラ
窪田正孝
清野菜名
眞島秀和
小籔千豊
坂元愛登
山口美也子
きたろう
カトウシンスケ
河合優実
でんでん
仲野太賀
真木よう子
柄本明
平野啓一郎原作
ずっと見たかった作品をやっと見ることができた。
弁護士の城戸(妻夫木聡)は、
かつての依頼者・谷口里枝(安藤サクラ)から、
亡くなった夫・谷口大祐(窪田正孝)の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。
里枝は離婚を経験後に子どもを連れて故郷へ帰り、
やがて出会った谷口と再婚、
新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていたが、
谷口は仕事中の事故で亡くなった。
長年疎遠になっていた谷口の兄(眞島秀和)が、
遺影に写っているのは弟ではないと話したことから、
愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明した。
夫はいったい誰なのか?
城戸は谷口の正体を追う中で様々な人物と出会い、
驚くべき真実に近づいていく。
城戸は服役中の戸籍交換屋の小見浦(柄本明)と面会する。
そこで自分の出自を在日朝鮮人と看破され、いらだちを見せる。
あることから谷口の正体に近づいた城戸。
ラストシーンは驚きの展開となる。
これはよくできたミステリーサスペンス。
満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
誰にでも成り得るし、確かなものは無い
社会性とエンタメミステリーの見事な両立
最初の絵のワンショットから、最後の終わり方まで見事な出来だった。
平野啓一郎を知っていたら、わかりやすいテーマであるし、物語と見事にマッチしている。
また、直接的に表現するわけでもなく、比喩なども、うまく使いながらの、バランスもいい。
感動を呼ぶ展開みたいな売り方をしていたが、その部分は正直盛り過ぎだとは思った。それを引いても面白いのだが。
絵に関しては、最初は、在日韓国人→帰化した2人分。最後には戸籍を変えて3人目。これをパンフレットの表紙にして絵画調にしているのもセンスいい。
それにしても、ラスト前の浮気シーン、平和な食事シーンなのに、このままでは終わらないという空気感にハラハラドキドキして、とても怖かったのが印象的だった。作品全体が作ってきた流れが凝縮されているとも感じる。
2023年劇場鑑賞70本目
原作と違うラストシーンに新鮮味を感じました。
原作は既読です。
映画は原作と異なり、城戸が旅先のバーで客と話すシーンで終わっています。
まるで谷口大佑に成り済ましたような城戸。
このシーンに変えた脚本のアイデア、技アリと思った。
違和感を感じる人もいるかも知れないけれど、真面目でやや堅苦しい城戸。
城戸が「自分にも別の人生を・・・」
自分もそんな型に捉われない視点で生きられたら?
そんな柔らかな生き方もあるとしたら少し城戸を楽にしたように感じた。
この真面目な原作に、奥行きと引き出しが増えた感じです。
人間は真面目な城戸弁護士でさえ、別の人生を夢見たり、
別の生き方を選ぶ選択肢が残っている。
もしかしたら、新しい人生を生き直すことも不可能ではないかも知れない。
この考え方は必ずしもこの映画の趣旨とは違うけれど、生い立ちや出自から
自由になることも可能かも知れない。
宮崎県の小さな町で文房具屋を営なむ離婚したシングルマザーの
里枝(安藤サクラ)。
再婚した夫の谷口大佑(窪田正孝)の名前が偽名で、本人ではなかったという
驚きの事実が判明するところから物語りが動き出す。
いったい里枝の夫の大佑は誰だったのか?
里枝は弁護士の城戸に大介の身元探しを依頼する。
そうして紆余曲折を経て、ひとりの男の悲しい過去が明らかになる。
谷口大佑を名乗っていた「ある男」
その過去は非常に厳しい過去で、多分その境遇だったら
多くの人は戸籍を買い取ってでも別人に生まれ変わりたいと願うだろう。
でも後2〜3年したら、戸籍を買い取るなんて無理になると思う。
マイナンバーが普及して別人に成りすますなんて不可能だと思う。
戸籍ブローカーの柄本明。
大火災で殺した人物と入れ替わった「飢餓海峡」
また、別人に成り済ました「砂の器」にもよく似ている。
その2つより「ある男」はそんなに推理小説的な展開はしない。
不幸な男が、戸籍を買って生い立ちを変えてごく平凡な人生に
ルート変更した。
そして事故で死んだ。
「ある男」を探す弁護士の城戸。
城戸もまた在日3世から帰化して、アイデンティティに悩みをを抱えている。
平野啓一郎の言うテーマ。
「分人主義」
人は対峙する相手によって様々な自分が現れる。
自分(私)に何人の自分がいて、何人を演じ分けられるか疑問だが、
人は案外無意識に、その場その場で違う自分を演じ分けながら、
生きているのかも知れない。
特異な物語りが、ラストシーンを変えたことにより、
少し身近に感じられた。
過去と今と未来
窪田正孝という俳優は恐ろしい。
日本アカデミー賞受賞後の凱旋上映にて。
窪田正孝が父親と息子の二役を演じている。
基本的には内向的な役柄が得意な役者なのだと思うが、テレビドラマで彼を初めて見たとき、少年サイコキラーの役に戦慄したのを覚えている。柔和と狂気の両極端を演じきれる役者だ。本作では、そのカメレオンぶりが発揮されている。
鏡に写る自分を見て癇癪を起こすときの“顔の演技”には、本当に驚く。
主人公は、戸籍を偽っていた男の正体を調査する弁護士。
彼は、調査を進めるうちに迷宮へと入り込んでいくのだ。
田舎町に流れてきた男と再婚して女児をもうけたシングルマザーだった女。
父親になった男を慕っている、女の連れ子の少年。
戸籍を上塗り上塗りして、出自を完全に消し去ろうとした男。
男が別人であることに気づいた、アナクロな偏見の持ち主である温泉旅館の長男。
投獄されている戸籍ブローカー。
男と戸籍を交換した行方不明の温泉旅館の次男。
行方不明の男を想っている元恋人。
夫に隠し事がある弁護士の妻。
他にもユニークなキャラクターが主人公弁護士に心理的影響を及ぼしていく。
そして、人の存在において過去とは何か、愛した人の存在証明とは何か、自分と他人を別けるものは何か、様々な問いを投げつける珠玉のミステリー映画だ。
「私はいったい誰を愛したんでしょう…」
「仮に、Xさんと呼ぶことにします」
安藤サクラが、映画の冒頭で見せる涙のシーンで、いきなり物語の穴に引きずり込まれる。
間もなくして、窪田正孝が実に訳ありげに登場するのだ。
おずおずと、文具店店主=安藤サクラに交際を申し込む正体不明の男=窪田正孝。
弁護士=妻夫木聡の登場順は遅い。
キーマンとなるのは、獄中の男=柄本明。また、この映画も柄本明が支える。
刑務所の洞窟のような長い廊下はいったい何だろう。まるで、秘密基地に続く地下通路だ。面会室のデザインも奇抜だ。
この非現実的な刑務所の美術が、柄本明の怪演と、それに対峙して圧迫されていく妻夫木聡の心理を際立たせる。
調査を請け負ったイケメン弁護士に、レクター博士よろしく関西弁の柄本明がヒントを与えながら揺さぶる。
弁護士は、妻の父親、妻、自身のルーツなど、幾つもの葛藤を背負っているのだった。
徐々に明かされるX氏の生い立ちは熾烈なものだった。
弁護士はいつしか彼と同化していた様だ。そのことを我々は衝撃のラストシーンで知らされる。
映画のオープニングで写し出された一枚の絵がラストシーンの演出に用いられている。絵を見つめる妻夫木聡の後ろ姿が、絵と重なりあう見事な演出。
亡くなった継父の素性を聞かされた安藤サクラの息子(坂元愛登)が、父の実子である幼い妹に、自分がいつか話すと言う。
この兄が引き受けた役割は重く、いつか彼から事実を聞かされる妹のことを思うと、いたたまれない思いだ。
戸籍にまつわるサスペンスと言えば『砂の器』を思い出す。
空襲によって焼失した戸籍の再生制度を利用したカラクリを松本清張が発表してから60年弱、本作(原作は未読だが)では戸籍を売買する仲介人が登場する。
別人として生きたいと考える人は少なくないのかもしれない。
戸籍交換とまではいかなくても、誰も知らない土地でやり直せたら、とは思ったりする。
このレビューサイトでも、メッセージを何度か交換したレビュアーさんとは、お互いリアルには知らないのに友人気分になったりする。
全く素性を知らないから、互いの評価に邪推がないのが心地よい。
そんな、自分をゼロから評価してくれる人たちの中で人生をやり直せたら…どうだろう。
全てが「ちょうどいい」作品
サスペンスがほどよく混ざっている物語、
俳優の演技もよく各伏線の収束もよかった。
ただテーマはいかにもシンプルなモノ:
アイデンティティー
物語自体はあまりにも典型的というか
どの映画でも扱いそうで扱ってないかもしれないパターンが多い。
・正体不明の身内
・自身にも問題だらけの事件の追手
・それなり問題になる社会背景
に加えて、
・観客の視線を支えてきた追手の変異
→ゾクっとして終わり
全て完璧なのに
観終わって、、、大したモノ観てない気がする。
型にはまったという少々嫌な後味。
その全てが丸く収まったとう有り難さに★★★★
奥底にあるモノ
過去に向かうベクトルとそれを打ち消そうとするベクトルの、衝突ではなく昇華を描いた一作
事故で亡くなった夫は別人だった、というミステリアスな事態から展開していく物語ですが、「彼の正体は!?」という謎解きよりもその背景(動機)を少しずつ解きほぐしていく繊細な描写に注目したい内容となっています。あるいは冒頭に登場するルネ・マグリットの絵画と本作がどう同調しているのかを探る物語、ともいえるでしょう。
主人公谷口里枝を演じる安藤サクラをはじめ多くの登場人物の見せる、何かを押さえ込むような表情と立ち振る舞いは、本作の核心部分にも関わる重要な要素となっており、注目に値します。そんな制約から自由である(かのように見える)柄本明演じる服役囚の言葉と表情の強さも。
映像的な主張もまた物語の語り口同様抑制的で、かなりの年月が堆積しているものの雑然とはしていない文房具店や、洗練されているけどどこか空虚な城戸弁護士の自宅など、その場所の雰囲気をごく自然に体感できる美術に集中している印象があります。一方、繰り返される子供の背中越しの映像は、その先に何があるのか、という期待と不安を表現していて、本作においてとても印象的な「引っかかり」として機能しています。
本作は明らかに、「排除」にさらされる人々、あるいは排除に対する「畏れ」について言及していますが、それに対する作品としての応答の仕方は、例えば『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)を想起させるもの(というかむしろ『マンチェスター』のその先を描いている)で、結末における悠人(坂元愛登)の言葉とそれを受けた里枝の反応が、本作全体を貫くテーマを凝縮している化のようでした。最後の最後に仕掛けられたエピソードは、単なる感動作にしないぞ、という原作者と映画製作者のメッセージのようで面白かったんですが、評価はやや分かれそうです。この部分について、肯定的評価と否定的評価のどちらが多いのか、ちょっと気になります。
パンフレットは最近の水準からすれば平均的な価格ですが、丁寧な解説やインタビュー記事が豊富に盛り込まれていて、とても満足感の高い内容でした!
心が震えた
自分に流れている血を抱きながら、
成りたい自分を生きる。
妹が大きくなったら、どんな言葉で伝えるのだろう。
寂しいね、と涙するお兄ちゃんは、とても複雑な生い立ちを背負ってしまったが、
優しいこの子はお母さんの支えとなり、いい青年に成長するだろう、、して欲しい。
演者も素晴らしいし、テーマソングが無いのも良い。
逃れられない血を抱えて生きる。
ずんと心に重しが残った作品でした。
地味なタイトルですが名作だと思いました
結婚して自分と生活を共にしてきた旦那が亡くなった後で、その経歴が別人のものだったというミステリー映画です。
未亡人になった妻から依頼を受けた弁護士事務所が、亡くなった旦那の隠された過去の経歴の調査を開始するのですが、驚きの結末を迎えます。
この映画の始まりと最後に映し出される絵画が伏線となっていて、作品全体に重いトーンを与えています。
第46回日本アカデミー賞で、最多8部門で最優秀賞受賞したのも、納得です。
地味なタイトルですが、私は名作だと思いました。
全528件中、161~180件目を表示