ある男のレビュー・感想・評価
全522件中、161~180件目を表示
弁護士の城戸(妻夫木聡)は、 かつての依頼者・谷口里枝(安藤サクラ)から、 亡くなった夫・谷口(窪田正孝)の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。
動画配信で映画「ある男」を見た。 2022年製作/121分/G/日本 配給:松竹 劇場公開日:2022年11月18日 妻夫木聡 安藤サクラ 窪田正孝 清野菜名 眞島秀和 小籔千豊 坂元愛登 山口美也子 きたろう カトウシンスケ 河合優実 でんでん 仲野太賀 真木よう子 柄本明 平野啓一郎原作 ずっと見たかった作品をやっと見ることができた。 弁護士の城戸(妻夫木聡)は、 かつての依頼者・谷口里枝(安藤サクラ)から、 亡くなった夫・谷口大祐(窪田正孝)の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。 里枝は離婚を経験後に子どもを連れて故郷へ帰り、 やがて出会った谷口と再婚、 新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていたが、 谷口は仕事中の事故で亡くなった。 長年疎遠になっていた谷口の兄(眞島秀和)が、 遺影に写っているのは弟ではないと話したことから、 愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明した。 夫はいったい誰なのか? 城戸は谷口の正体を追う中で様々な人物と出会い、 驚くべき真実に近づいていく。 城戸は服役中の戸籍交換屋の小見浦(柄本明)と面会する。 そこで自分の出自を在日朝鮮人と看破され、いらだちを見せる。 あることから谷口の正体に近づいた城戸。 ラストシーンは驚きの展開となる。 これはよくできたミステリーサスペンス。 満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。
誰にでも成り得るし、確かなものは無い
目の前の人間が、確かなものは何も無く名前も素性も血も何もかもが虚構の中にあるように思えてくる。ボクサーのリングネームだったり、離婚や家庭環境で変わる名字に為す術なく苦しめられる子どもだったり。秀逸な表現で、自分が何者か分からなくなり、何者にでも成り得ることをみせつけられた。
社会性とエンタメミステリーの見事な両立
最初の絵のワンショットから、最後の終わり方まで見事な出来だった。
平野啓一郎を知っていたら、わかりやすいテーマであるし、物語と見事にマッチしている。
また、直接的に表現するわけでもなく、比喩なども、うまく使いながらの、バランスもいい。
感動を呼ぶ展開みたいな売り方をしていたが、その部分は正直盛り過ぎだとは思った。それを引いても面白いのだが。
絵に関しては、最初は、在日韓国人→帰化した2人分。最後には戸籍を変えて3人目。これをパンフレットの表紙にして絵画調にしているのもセンスいい。
それにしても、ラスト前の浮気シーン、平和な食事シーンなのに、このままでは終わらないという空気感にハラハラドキドキして、とても怖かったのが印象的だった。作品全体が作ってきた流れが凝縮されているとも感じる。
2023年劇場鑑賞70本目
原作と違うラストシーンに新鮮味を感じました。
原作は既読です。 映画は原作と異なり、城戸が旅先のバーで客と話すシーンで終わっています。 まるで谷口大佑に成り済ましたような城戸。 このシーンに変えた脚本のアイデア、技アリと思った。 違和感を感じる人もいるかも知れないけれど、真面目でやや堅苦しい城戸。 城戸が「自分にも別の人生を・・・」 自分もそんな型に捉われない視点で生きられたら? そんな柔らかな生き方もあるとしたら少し城戸を楽にしたように感じた。 この真面目な原作に、奥行きと引き出しが増えた感じです。 人間は真面目な城戸弁護士でさえ、別の人生を夢見たり、 別の生き方を選ぶ選択肢が残っている。 もしかしたら、新しい人生を生き直すことも不可能ではないかも知れない。 この考え方は必ずしもこの映画の趣旨とは違うけれど、生い立ちや出自から 自由になることも可能かも知れない。 宮崎県の小さな町で文房具屋を営なむ離婚したシングルマザーの 里枝(安藤サクラ)。 再婚した夫の谷口大佑(窪田正孝)の名前が偽名で、本人ではなかったという 驚きの事実が判明するところから物語りが動き出す。 いったい里枝の夫の大佑は誰だったのか? 里枝は弁護士の城戸に大介の身元探しを依頼する。 そうして紆余曲折を経て、ひとりの男の悲しい過去が明らかになる。 谷口大佑を名乗っていた「ある男」 その過去は非常に厳しい過去で、多分その境遇だったら 多くの人は戸籍を買い取ってでも別人に生まれ変わりたいと願うだろう。 でも後2〜3年したら、戸籍を買い取るなんて無理になると思う。 マイナンバーが普及して別人に成りすますなんて不可能だと思う。 戸籍ブローカーの柄本明。 大火災で殺した人物と入れ替わった「飢餓海峡」 また、別人に成り済ました「砂の器」にもよく似ている。 その2つより「ある男」はそんなに推理小説的な展開はしない。 不幸な男が、戸籍を買って生い立ちを変えてごく平凡な人生に ルート変更した。 そして事故で死んだ。 「ある男」を探す弁護士の城戸。 城戸もまた在日3世から帰化して、アイデンティティに悩みをを抱えている。 平野啓一郎の言うテーマ。 「分人主義」 人は対峙する相手によって様々な自分が現れる。 自分(私)に何人の自分がいて、何人を演じ分けられるか疑問だが、 人は案外無意識に、その場その場で違う自分を演じ分けながら、 生きているのかも知れない。 特異な物語りが、ラストシーンを変えたことにより、 少し身近に感じられた。
過去と今と未来
日本アカデミー賞受賞記念のティーチイン舞台挨拶付きで鑑賞。 人は相手の過去や背景などを知りたがるが、今と未来が幸せであればそんなものは知らなくてもいいのかもしれない。 良くも悪くも、人は誰にでも何にでもなれる。
窪田正孝という俳優は恐ろしい。
日本アカデミー賞受賞後の凱旋上映にて。 窪田正孝が父親と息子の二役を演じている。 基本的には内向的な役柄が得意な役者なのだと思うが、テレビドラマで彼を初めて見たとき、少年サイコキラーの役に戦慄したのを覚えている。柔和と狂気の両極端を演じきれる役者だ。本作では、そのカメレオンぶりが発揮されている。 鏡に写る自分を見て癇癪を起こすときの“顔の演技”には、本当に驚く。 主人公は、戸籍を偽っていた男の正体を調査する弁護士。 彼は、調査を進めるうちに迷宮へと入り込んでいくのだ。 田舎町に流れてきた男と再婚して女児をもうけたシングルマザーだった女。 父親になった男を慕っている、女の連れ子の少年。 戸籍を上塗り上塗りして、出自を完全に消し去ろうとした男。 男が別人であることに気づいた、アナクロな偏見の持ち主である温泉旅館の長男。 投獄されている戸籍ブローカー。 男と戸籍を交換した行方不明の温泉旅館の次男。 行方不明の男を想っている元恋人。 夫に隠し事がある弁護士の妻。 他にもユニークなキャラクターが主人公弁護士に心理的影響を及ぼしていく。 そして、人の存在において過去とは何か、愛した人の存在証明とは何か、自分と他人を別けるものは何か、様々な問いを投げつける珠玉のミステリー映画だ。 「私はいったい誰を愛したんでしょう…」 「仮に、Xさんと呼ぶことにします」 安藤サクラが、映画の冒頭で見せる涙のシーンで、いきなり物語の穴に引きずり込まれる。 間もなくして、窪田正孝が実に訳ありげに登場するのだ。 おずおずと、文具店店主=安藤サクラに交際を申し込む正体不明の男=窪田正孝。 弁護士=妻夫木聡の登場順は遅い。 キーマンとなるのは、獄中の男=柄本明。また、この映画も柄本明が支える。 刑務所の洞窟のような長い廊下はいったい何だろう。まるで、秘密基地に続く地下通路だ。面会室のデザインも奇抜だ。 この非現実的な刑務所の美術が、柄本明の怪演と、それに対峙して圧迫されていく妻夫木聡の心理を際立たせる。 調査を請け負ったイケメン弁護士に、レクター博士よろしく関西弁の柄本明がヒントを与えながら揺さぶる。 弁護士は、妻の父親、妻、自身のルーツなど、幾つもの葛藤を背負っているのだった。 徐々に明かされるX氏の生い立ちは熾烈なものだった。 弁護士はいつしか彼と同化していた様だ。そのことを我々は衝撃のラストシーンで知らされる。 映画のオープニングで写し出された一枚の絵がラストシーンの演出に用いられている。絵を見つめる妻夫木聡の後ろ姿が、絵と重なりあう見事な演出。 亡くなった継父の素性を聞かされた安藤サクラの息子(坂元愛登)が、父の実子である幼い妹に、自分がいつか話すと言う。 この兄が引き受けた役割は重く、いつか彼から事実を聞かされる妹のことを思うと、いたたまれない思いだ。 戸籍にまつわるサスペンスと言えば『砂の器』を思い出す。 空襲によって焼失した戸籍の再生制度を利用したカラクリを松本清張が発表してから60年弱、本作(原作は未読だが)では戸籍を売買する仲介人が登場する。 別人として生きたいと考える人は少なくないのかもしれない。 戸籍交換とまではいかなくても、誰も知らない土地でやり直せたら、とは思ったりする。 このレビューサイトでも、メッセージを何度か交換したレビュアーさんとは、お互いリアルには知らないのに友人気分になったりする。 全く素性を知らないから、互いの評価に邪推がないのが心地よい。 そんな、自分をゼロから評価してくれる人たちの中で人生をやり直せたら…どうだろう。
全てが「ちょうどいい」作品
サスペンスがほどよく混ざっている物語、
俳優の演技もよく各伏線の収束もよかった。
ただテーマはいかにもシンプルなモノ:
アイデンティティー
物語自体はあまりにも典型的というか
どの映画でも扱いそうで扱ってないかもしれないパターンが多い。
・正体不明の身内
・自身にも問題だらけの事件の追手
・それなり問題になる社会背景
に加えて、
・観客の視線を支えてきた追手の変異
→ゾクっとして終わり
全て完璧なのに
観終わって、、、大したモノ観てない気がする。
型にはまったという少々嫌な後味。
その全てが丸く収まったとう有り難さに★★★★
奥底にあるモノ
役者さん全員熱い演技で面白かった。 実は中学生の子が一番難しい役どころなんじゃ無いか?と個人的には思いました。 中学生役の子、少年時代の「エックスさん」役の子、素晴らしかったです。 ただ個人的にストーリー上、腑に落ちないところがあったので星を一つ引きました。 でも全体的に見応えのある作品でした☺️
過去に向かうベクトルとそれを打ち消そうとするベクトルの、衝突ではなく昇華を描いた一作
事故で亡くなった夫は別人だった、というミステリアスな事態から展開していく物語ですが、「彼の正体は!?」という謎解きよりもその背景(動機)を少しずつ解きほぐしていく繊細な描写に注目したい内容となっています。あるいは冒頭に登場するルネ・マグリットの絵画と本作がどう同調しているのかを探る物語、ともいえるでしょう。 主人公谷口里枝を演じる安藤サクラをはじめ多くの登場人物の見せる、何かを押さえ込むような表情と立ち振る舞いは、本作の核心部分にも関わる重要な要素となっており、注目に値します。そんな制約から自由である(かのように見える)柄本明演じる服役囚の言葉と表情の強さも。 映像的な主張もまた物語の語り口同様抑制的で、かなりの年月が堆積しているものの雑然とはしていない文房具店や、洗練されているけどどこか空虚な城戸弁護士の自宅など、その場所の雰囲気をごく自然に体感できる美術に集中している印象があります。一方、繰り返される子供の背中越しの映像は、その先に何があるのか、という期待と不安を表現していて、本作においてとても印象的な「引っかかり」として機能しています。 本作は明らかに、「排除」にさらされる人々、あるいは排除に対する「畏れ」について言及していますが、それに対する作品としての応答の仕方は、例えば『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)を想起させるもの(というかむしろ『マンチェスター』のその先を描いている)で、結末における悠人(坂元愛登)の言葉とそれを受けた里枝の反応が、本作全体を貫くテーマを凝縮している化のようでした。最後の最後に仕掛けられたエピソードは、単なる感動作にしないぞ、という原作者と映画製作者のメッセージのようで面白かったんですが、評価はやや分かれそうです。この部分について、肯定的評価と否定的評価のどちらが多いのか、ちょっと気になります。 パンフレットは最近の水準からすれば平均的な価格ですが、丁寧な解説やインタビュー記事が豊富に盛り込まれていて、とても満足感の高い内容でした!
心が震えた
自分に流れている血を抱きながら、
成りたい自分を生きる。
妹が大きくなったら、どんな言葉で伝えるのだろう。
寂しいね、と涙するお兄ちゃんは、とても複雑な生い立ちを背負ってしまったが、
優しいこの子はお母さんの支えとなり、いい青年に成長するだろう、、して欲しい。
演者も素晴らしいし、テーマソングが無いのも良い。
逃れられない血を抱えて生きる。
ずんと心に重しが残った作品でした。
地味なタイトルですが名作だと思いました
結婚して自分と生活を共にしてきた旦那が亡くなった後で、その経歴が別人のものだったというミステリー映画です。 未亡人になった妻から依頼を受けた弁護士事務所が、亡くなった旦那の隠された過去の経歴の調査を開始するのですが、驚きの結末を迎えます。 この映画の始まりと最後に映し出される絵画が伏線となっていて、作品全体に重いトーンを与えています。 第46回日本アカデミー賞で、最多8部門で最優秀賞受賞したのも、納得です。 地味なタイトルですが、私は名作だと思いました。
余韻が残る作品
物語は淡々と進むが、キャストが自分達の役割をしっかり演じていた印象です。映像で全てを解決せずに、観る側へ感じ方を投げかけている。原作もさることながら、監督が良い作品に作り上げたんだと感じました。
小説よりもわかりやすくて面白かった。 難しい法律問題をきちんと説明...
小説よりもわかりやすくて面白かった。 難しい法律問題をきちんと説明し、登場人物も際立っていた。 視聴者を考えさせる終わり方も秀逸
柄本明の大阪弁の闇
映画のストーリーは淡々と真実に迫っていく
抑制の効いた俳優たちの演技もそれと相まってこの映画のトーンをつくっている
ラストの展開も観客の期待を裏切らない
でもそれだけならある意味平凡な映画だ
この映画に深みを与えているのは柄本明の大阪弁であると感じた
関西の人には違和感を与えるエセ大阪弁を操って、(レクター教授ほどではないが)闇への入口を体現している
彼の視点からは、自分の人生や彼の手により他人の人生を生きようとする人々はどう見えているのだろう?
それは人間の存在としてありうべきものなのだろうか?
そこで感じる幸福は本当の幸福と言えるのだろうか?
そこにこの映画の本当の問いがあるように感じました
--
あとは小籔さんの存在がなんか深いわー
彼にも賞をあげてほしい笑
逃れられない闇
付き纏う自身のルーツに翻弄されるミステリー作品。 非常にゆっくりと、ページをめくるように進む物語が秀逸でした。 そんな作りだからでしょうか、安藤サクラを始めキャストの演技をじっくりと堪能できます。 それと窪田正孝ですね。気がつくと良い雰囲気を出すようになってました。 妻夫木聡も表情がうまく、段々と重く沈んでゆく感じが良かったです。 作品はそれぞれが抱える“逃れられない闇”、それらが実に巧妙に絡み合っていました。 社会的な差別や偏見がずっと横たわり、絵画で始まり絵画で終わる。 この皮肉めいた強烈な仕掛けが効いてました。 きっとどこにでもいるであろう「ある男」の物語でした。
日本アカデミー最多受賞作品なので
観る機会を逃していましたが日本アカデミー賞を最多部門受賞した作品なので少し遠くまで観に行きました。冒頭の安藤サクラと窪田正孝の出会いの場面だけで延々と見ていられます。やはり良い役者さんはただ見てるだけで良いですね。妻夫木さん含めてメインの役者さんも脇を固める役者さん達もとても素晴らしかったし脚本も素晴らしいかったです。ただ個人的な日本アカデミー賞は僅差で流浪の月の広瀬すずと松坂桃李、横浜流星さんでした。
全522件中、161~180件目を表示