ある男のレビュー・感想・評価
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噓と真実と心の拠りどころ
愛した人が事故死して初めて、全く別人に成りすましていたことが分かり、では一体誰なのか、弁護士に調査を依頼する話。
確かにあったと信じていたものが、ある日突然ひどく頼りないものに変わってしまいます。
安藤サクラさん、窪田正孝さん、妻夫木聡さんの安定の演技で、重厚な作品となっていました。
ちょっと違和感があった所。
・大祐が「家庭がありますもんね」と問いかけ、里枝が「家庭はないですよ。離婚したから」というセリフ。息子も母親もいるのだから「夫はいないですよ」と答えるべきです。家庭は夫婦が築くもの、という思い込みがあるんじゃないでしょうか。
・城戸の妻の父親の差別発言も極端ですが、小見浦が、「在日(朝鮮人)は見ればすぐわかる」と言うセリフ。そうとは限らないし、それを殊更強調する必要があるんでしょうか。
・親子の画風が似るとしたら、子供が親の真似をするからで、遺伝はしません。
でも、夫(息子にとっては父親)の愛情は真実だったと確信して、自分たちは強く生きていけると思う結末は素敵でした。
一方で、親身になって調査した城戸は妻の裏切りにあう(でも前から気付いていた)というのは皮肉なラストですが、仕事に生きがいを感じられるなら、そういう生き方もあるかもしれません。この人生は手放したくない、でも、ちょっと他人になってみる。なるほど。
疎外感。
「殺人犯の息子」と「在日」。自分ではどうすることもできない生まれによるいわれなき差別。
世間はその人個人を見ようとはせず、その素性だけでその人を見てしまう。そんな世間で生きづらさを感じて生きてきた両者。
一方は戸籍を変えて全くの別人として生きようとした。一方は帰化をして日本社会に溶け込もうとした。
戸籍を変えた男は事故で命を落としたのをきっかけに別人に成りすましていた事実が明るみになる。
帰化した男は、社会的地位と家庭を手に入れて一見何ら問題がないように見えた。しかし彼は常にこの社会で疎外感を感じている。
たとえ全てを手に入れて、帰化までして日本社会に溶け込んでも己のルーツを否定することは出来ない。どこへ行ってもそれは自分にまとわりついてくる。「殺人犯の息子」としてその偏見のなかで生きてきた男の姿が自身とかぶる。
真実を知った妻はたとえ夫の名前が別人であろうとも自分が愛した男には違いがないと言う。戸籍を変えた男はほんの束の間ではあったが自身の人生を全うすることが出来た。
作品ラストで別人に成りすます城戸の姿。この社会では常に疎外感がまとわりつく彼にとって、自分ではない全く違う誰かを演じることでしか、この社会の偏見から逃れるすべはないのかもしれない。ほんの束の間の安らぎを得る唯一の方法として。
戸籍は偽りでも真実の愛があった
世の中には名前を変え素性を偽らないと生きられない人がいる。他人の戸籍を自分のものとして。
窪田正孝さんが演じたのはそんな男。しかしいくら人を避けても人に惹かれるのはやむを得ず。
そんな男に惹かれ再婚したバツイチ子持ちの女性を演じた安藤サクラさん。
二人が暮らした数年間。
不慮の事故による夫の死。
中盤からは妻夫木さんが男の素性を追うミステリーとなったが、自分にとってはピュアなラブストーリーだった。
そう、観る我々は男の人生において最良の時であったことを知る。
二人が暮らした幸せな時間を思い涙した。
幸せの真っ只中で逝く無念を思い涙した。
「幸せが永遠に続けばいいのに」といつも思う。
他者の人生を歩む理由は……
亡くなった夫の葬儀の為に親類を呼んだら別人であることが判明し、戸籍などの手続きの為に弁護士に真相の究明を依頼するが――
他者の名前を騙り、自分を知らない土地で職をえて、家族を持ち暮らした彼の過去に迫る中で
明らかになる事実。
人は自らの生まれ、という呪縛から解き放たれることはできないのか、いろいろと考えさせられる。
それで幸せになれるならそれもまた人生か?
その人の後ろではなく、その人を見るという事
その人がどんな家庭で育ったとか、どんな家族がいるのかとか、もっと言えば周りの評価とか噂話とか、無意識のうちに人を見る時に、その人ではない事ばかり気にしている。
目の前にいるその人だけを信じる時に名前や戸籍はただの記号でしかないんだな。
今日から、人の事は自分の目で見て、自分が話してみて感じながら、かかわっていきたいな。と思った。
それにしても妻夫木聡って歳はとってるんだけど、変わらないなぁ。
退屈させない重厚感
キャストの方々の魅力やお洒落な演出に引き込まれる作品。
ストーリーのテンポも良く、あとどのくらいで終わるかな?など考えずに済みました。
フラグが分かりやすいため、序盤で全体の展開の予想がついてしまうのですが、退屈はしません。
たとえ結末が分かっていても、演技や演出に魅力があればいくらでも楽しめるのだと改めて思わされました。
俳優陣、みーんな良かったですが、清野菜名ちゃん可愛かったです。
悪くはないけど…
期待していた盛り上がりがないまま不完全燃焼で終わった感じ。
安藤さくらさんは素晴らしい!
別格の女優さんだと改めて認識させられました。
窪田くんはじめ俳優陣の演技は一見の価値あり。なので星三つ。
ただストーリー的には映画に相応しいほどのドラマがなく、特番のドキュメンタリーで良さそうな話だなと思った。
魂の救済
原作を読んだ時に感じた虚無感より、過酷な運命から逃げてきた「ある男」が最期に過ごした日々の温かさの方に心が満たされました。義父の出生の秘密を知った長男と安藤サクラさんのシーン、窪田正孝さんの山中での幻想的なラストショット、良かったです。
どんな人生も救われる希望があるのだと信じたいなあ。という感想です。
さて、妻夫木聡さん演じる主人公は、分人と化した自分との折り合いをいかに付けて生きてゆくのか。現代に生きる私たちの誰しもが抱える闇とともに、謎が解けないままに映画は終わっています。
救済への鍵は、ひとりひとりに委ねられているという平野啓一郎原作作品らしい突き放したラストでした。
ルネ・マグリットの不思議な絵の魅力も加わって、印象的な作品となりました。本年度邦画no.1かな。
素晴らしい!
中弛みも無く、最後の最後まで引き込まれました。
妻夫木聡、窪田正孝、安藤サクラの演技の素晴らしさ、そして何と言っても「柄本明」の怪演。
ストーリーの整合性もいいし、キャストの素晴らしさも相まって素晴らしい作品でした。
原作読みたくなった!
怖い
ストーリーの骨子は哲学的なもので、人は「遺伝的に自己を形成するのか」もしくは「環境の中で自己を形成するのか」を比べ合うようなものでした。結局の所「どちらかを分ける事なんて出来やしない」と答えが出ているのにそれを下敷きにダラダラとしていました。ブレードランナーやフランケンシュタイン、攻殻機動隊の焼き直しにもなっていませんでした。
戸籍の改ざんについて、少年以外には誰も迷惑していないし(名字を変えるのが面倒)皆それ相応に現状に満足してうけいれていました。
そもそも戸籍の改ざんに問題があるとするならば、すでに国家権力動いているはずです。
まあ、それだと映画にならないのでしかたがないと思います。
映画としては、しっかりとまとまっていて、あまり退屈はしませんでした。音楽が少なかったので、役者さんの力量頼るところが多分にありました。特に主軸の3方は素晴らしかったです。ただ、脇役の方々も良い役者さんばかりなので、高い次元で演技レベルが集まりすぎていて全体が薄まっていたように感じました。
あと、妻夫木さんのシーンはオレンジ系の明るい色味で、一方の窪田さんの方は淡いブルーの色調撮られていた思えたのは気のせいでしょうか。
この映画ように簡単に戸籍を換える事ができたなら保険金殺人とか、偽装結婚等が頻発し(替え玉受験とかあるし)、社会混乱が起きると思うと怖くなりました平和な世の中でいてほしいですね。
あと泣けませんでした。
出生とか両親とか選べないもんね。
辛い話でした。
周りにいる人達に言われると言うより、自分の顔が成長と共にどんどん父親に似てきて、記憶の中にいる父親が鏡の中に見えた時の苦しさ辛さ。精神的に追い込まれるのも分かります。
木こりをやりながら家族と過ごす幸せな時間がもっと長かったら良かったのにね。
窪田正孝さん、安藤サクラさん、妻夫木聡さん。皆さん素晴らしかった。
特に窪田正孝さん、大好きです。
この作品には誤解、偏見を招く看過できない箇所があります。
まず、最初に作品全体としてはミステリ風味のヒューマンドラマという点では、演者の熱演、怪演も相まって非常にレベルの高いものである、と評価したいです。
だがしかし・・・原作によるものか映画自体の脚本によるものか原作未読の私には判別出来ませんが、明らかに偏見を助長する内容が明示されており、それには閉口いたしました。
いわゆるこの作品における社会派きどりの論点です。
それは死刑囚の実父が獄中で描いた絵を経験上その絵を知り得ない子供がほぼ同じ筆致で再現できたという点。おいおい、普段の風景画とまるで画風が違うじゃんかというツッコミつきです。
それが暗喩されるレベルならまだ救いがあるが、物語のキーポイントで使われ、人物特定されてしまうくだり。
犯罪心理学的に凶悪犯(作中では死刑囚)が描く絵の一部に一種の特徴、異常性があることを示唆する内容で、それは研究論文もあることから一定の評価をすべきです。
が、この凶悪犯の異質な感覚、精神構造子孫にも遺伝する・・・的なところを物語上の確定情報として記すのは大変ナンセンスかつ誤解を招く内容だと思います。
あとテレビでやってるヘイトスピーチについても扱い方が雑、かつ非常に表面的で、在日問題の芯をまるで捉えていない。ここは全く論点ではない。
こんな扱いなら無理に触らないほうがまし。冒頭にあった義父の発言のほうが余程、感覚的には的を射ています。こちらはいわゆる老害レッテル張りの高齢者ヘイトですけどね(笑)。
じわっとくる読後感は良かっただけに、作品の完成度としては非常にもったいないなあと思いました。
では。
宿命
自分ではどうすることもできない背負って生まれてきたもの。
死刑囚の息子。鏡に映っているのは父にそっくりな顔。在日であること。帰化しても出自はついてまわる。
変わるためにはすべてを捨てて他人になりすまさなければならないのか。いや、それでも変わることはできない。
暗く重い内容なのに観終わって気が重くならない。
ある意味ミステリーなのに気を衒わない誠実な演出。
里枝が大祐に、大祐が里枝に惹かれていったように観ている私たちもいつしか二人の哀しみに寄り添っている。
城戸と共に大祐の身元調査にのめり込んでいく。
安藤さくら、窪田正孝、妻夫木聡。
主役三人をはじめとする俳優さんたちの魅力に引き込まれていく。
予告で観た柄本明。また柄本明こんな役かと思っていたら、柄本明は柄本明をはるかに超えてきた。
山口美也子と池上季実子の変わり様。
でんでん、きたろう、モロ師岡に小籔千豊。笑いを封じた真面目な演技。小籔千豊あまり好きじゃなかったけどよかった。
出番は少ないが清野菜名と仲野太賀。仲野太賀の続きはジャパニーズスタイルなのかな。
いつもはチョイ役だけどちょっと長めに出てたカトウシンスケと眞島秀和。
そして河合優実が出てた。「百花」は河合優実目当てで観に行ってガッカリしたけど、今作は出てるの知らなかったから得した気分。
あ、アジアの天使も出てました。
個人的には母子の会話、あの男の子の台詞で終わってくれた方がよかったかな。しあわせな時間があったのは事実だったに救われる。
何気ない話なのに
話がネタバレに進むに連れ事件もあまりなくただ物語を追いかける話。
しかしキャストがハマるとここまで観続ける事が出来るのかと実験のような映画。
大きくはボクシングシーンが最大の見せ場なのか、あとは消化試合のようなストーリー。柄本明演じる詐欺師も何も物語上は語っていないがどこか引き込まれる。
ラストのテーマは人間の欲やテーマのように思える。
柄本さんの大阪弁
元々は東京の人ですよね。
大阪弁うまかったなぁ。
大阪の叔父とそっくりな話し方で、やんわりしてるけど、狂気をそそる話し方でした。
ラストまで目が離せない秀逸なミステリー。
エリート上流家庭の弁護士の城戸さんが一番闇が深かったですね、、
あれからどうなって行くのか。
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