「愛する人のなにを見ているだろうか。」ある男 ゆちこさんの映画レビュー(感想・評価)
愛する人のなにを見ているだろうか。
肩書きやカテゴライズされた要素はどれ程の意味を持つのだろう。誰かを愛するとき、その人のなにを見ているだろう。そんな問いかけを感じました。
平野啓一郎原作の脚本は期待を裏切らない密度で、平野さんが提唱する分人主義をベースに、戸籍ロンダリング、死刑制度、ヘイトスピーチなどをテーマに取り入れています。哲学的でありながら物語である意味を強く感じる主張がありました。
「戸籍を入れ替え生き直す。それぐらいのことをしなければ生きていけない人もいるんだ」特に印象に残った台詞です。
ミステリー要素も濃く、サイコホラー感もあり迫られるような音の使い方は追い詰められる、逃れられない、そんな登場人物の感情と観客をリンクさせる演出で追体験させられているようでした。映画館で映画観てるなあ。という実感を強く持ちましたし、素直な感想は「怖かった」です。
場面によって主人公が変化する構成も面白かったです。複数人の人生に焦点を当てているため登場人物も多いのですが、煩雑さもなく流れが入ってきやすかった。
極力情報入れずに観たため、次々出てくる演技派俳優に驚き、笑みが溢れてしまうほどお芝居に圧倒され続けられました。
里枝の息子役坂元愛登さんもお芝居素晴らしかったです。間の取り方空気の作り方の事実っぽさたるや。この2人のシーンは台詞演出ともに良いものばかりで見どころの一つです。
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