「究極のアイデンティティ」ある男 印刷局員さんの映画レビュー(感想・評価)
究極のアイデンティティ
これは他人の人生を辿りつつ、自分探しをする男の物語だと解釈しました。よく「自分探し」とは云いますが、結局よく解らず終わりそうなもんです。だって、もともと何もないんですから。何もないところから生きる意味を見つけたり紡いだりするもんじゃないのでしょうか。
主人公「城戸」は在日であることにコンプレックスのようなものを抱き、形式的な幸福を手に入れているように見える。しかし、偽「谷口」(←曾根崎←原)の正体を突き止める過程で自分が本当はどう生きていきたいか薄々気付き、嫁の不倫LINEを偶然見てしまうことで、自分も自分を偽りながら生きていたのではないかという事実を突き付けられてしまう。偽「谷口」は「谷口」になることで短いながらも穏やかで充実した人生が全うできた。本当の「谷口」は「曾根崎」になり一度は人生をリニューアルするものの、恋人が会いに来ることでどうしていくのだろうか…まだ旅の途中である。
「誰」が「何者」であるかという定義付けは主観と客観いずれも正しいものである。自分で感じたもの、他人が感じたもの、全てはどれも紛れのない事実なのだから。
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