「カエルの子はオタマジャクシ」ある男 @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)
カエルの子はオタマジャクシ
東劇の試写室にて鑑賞。
座席がフカフカで感動した。
役者が豪華でみんな存在感がある。
序盤は窪田正孝さんと安藤さくらさんの出会いから夫婦になるまでを丁寧に描いている。
画材屋さんでナンパとかすごいな。
自分の絵を他人に見せるって割と勇気がいることなのに、見せてくれた絵が特別に上手いとかではなくて、一生懸命褒め言葉を探している感じがリアルで笑ってしまった。
家族4人。幸せに暮らしていたのに、谷口(窪田正孝)が不慮の事故で亡くなってしまうことから物語は急展開を見せる。
彼の実兄が「これ、弟じゃないです」と遺影を見ながら言い放つ。この時も淡々と会話が進むのだけれど、会話のテンポにリアリティがある。
自分の日常だと思っていた世界が実は虚構だったと知らされて驚いてしまう。
里枝(安藤さくら)が離婚する時にお世話になった弁護士の城戸(妻夫木聡)が谷口(窪田正孝)の正体、事実を確認していく。
物語はここで2つの視点に分岐する。
1つは「夫が何者であっても、愛していけるか」
2つ目は「カエルの子はカエルなのか」
後半戦の主役は完全に妻夫木聡演じる城戸に視点が移り、在日韓国人である自身のコンプレックスや一見幸せそうに見えてるけどギクシャクした妻(真木よう子)との夫婦関係が描かれています。
生い立ちを隠して結婚生活を送っていた谷口夫妻と経済的にも安定して生活している城戸夫婦の対比も面白かったです。
妻夫木聡さんが笑うと嘘くさいのはすごいなと思う。
作り笑顔の名手だと思う。絶対裏があって、激昂してキレそうな含みのある笑顔が怖いのよ。怖いの。笑顔なのに不穏なのってすごいですよね。
ラストである男の正体が判明するのですが、二転三転する物語の展開と登場人物の多さに頭がこんがらがります。
劇中でもホワイトボードを使って関係性を整理してくれるのでありがたかったです。
原作は未読なのですが、映画版と原作ではラストが違うそうです。
原作では谷口夫婦の話に視点が置かれた結末だそうです。
映画では「ある男」の過去を消し去る方法に視点が置かれた結末でした。
個人的にはミステリー色が強くなって映画版のラストでも良かったとは思うのですが、ラストを付け加えることで蛇足感があったかなぁとも感じました。
実際のところどっちだったの?
妄想?現実?とモヤッとした気持ちが残りました。
明日を生きる自分を作れるのは今の自分しかいないので、自分の生き方に後悔しないように生きていきたいなと考えさせられる映画でした。
ミステリーかと思ったら社会問題がテーマの作品でした。
見応えのある作品ですので、邦画が好きだよと言う方にオススメです。