「原作派大満足の映像化」ほんとうのピノッキオ seegenさんの映画レビュー(感想・評価)
原作派大満足の映像化
自分は原作も子供の頃から読んで馴染んでてグロテスクでダークなイメージの原作も馴染んでるしディズニー版とは別クチで認識して育った少数派。
映画は原作のキャラクター、イメージをかなり強く忠実に拾ってる反面、映画として整理されてたり原作で瞬殺のコオロギが何度も登場して延命されてるあたり、ディズニー版で育った世代にも多少救いの手を差し伸べてるような気がしないでもない…のだけど、まぁ、普通の観客の大半は置いてきぼり。
劇場内の空気が明らかに「期待してたピノッキオと違う…」という困惑の空気を感じて、自分の喜びとは裏腹に、言い訳したくなるようなビミョーな空気に包まれた鑑賞体験でした。
めちゃくちゃ良いんですけど、言うなればアート系単館でかかりそうなテイストなんですよ…。ピノッキオの木目=肌感も、不快スレスレというか…たぶん嫌いな人多数かも…?
いや、そこには最後のあの描写に意味を感じましたよ。…意気込みですよ。
美術も音楽もキレイだし、イタリアの貧困描写のキツさも、障害者を装いピノッキオに近づくキツネと猫の末路も原作通り。容赦ない。(いや、キツネ登場時の描写は障害者への差別的な、もっとエゲツナイ原作からは相当ライトになってる印象なんだけど、それは映画の現代のコードにのっとってるように見受けました。優しさ…なのか? センサードの敗北なのか?!)
家族で楽しく観に行くと、たぶん変な空気になるけど、これが本来のピノッキオだし原作よりはかなり口当たり良い気がする。
病気の熱でうなされた悪夢見てるような展開と空気感。そして、どこか教訓があるようで、詰めて考えるとどこか歯車ズレてるような…。
好みは分かれそう。
鬱展開やダークファンタジーに抗体があって好きなら一見の価値あり。きっと忘れられない映像体験になるはず。