「既成事実と信じた真実の崩壊」死刑にいたる病 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
既成事実と信じた真実の崩壊
大学生の雅也の元に24人を殺した連続殺人鬼から一通の手紙が届いた。
その殺人鬼の名は榛村大和。雅也が幼い頃通っていたパン屋の優しい店主だった。
手紙の通りに彼に会いに行くと、雅也はとある頼み事をされる。
それはたった一件の冤罪証明。
妙に興味を惹かれた雅也は1人で捜査を始めるのだが…
白石監督の最新作。
意外にも評価があまり高くないが、孤狼の血と並ぶ傑作だと思う。
自分はこの手の作品の展開を読めないことが多いが、本作は珍しく最後の展開を含め予想が当たった。
それでもなお面白い。
この作品の面白さはただのサイコスリラー作品以上のものがある。
※ここからは抑えてはいるものの、ややネタバレしているので、鑑賞予定のある人は見ないことをおすすめします。
まず、悪役がしっかりと悪役だった点。
途中でとある事実(?)が発覚し、他人事が自分事になることで、雅也と榛村の距離が近づく。
しかし、あくまでも雅也は正、榛村は悪としているところがとても良かった。
24人、若しくはそれ以上の高校生をいたぶった上で殺した連続殺人鬼。そこに情なんてものは必要ない。
榛村が発している負の空気、そして雅也が徐々に沼の深みへと足を踏み入れていく陰湿さが生々しく、完璧なる悪であった。
グロいと評判だったが、グロいよりは痛いじゃない?
それ以上に邪悪な阿部サダヲが何よりも恐ろしい。
予告からも滲み出ていた色を失ったあの真っ黒な目。
大きなスクリーンで見ると引き込まれてしまいそうな魅力的な目にも感じた。
あんな目、常人ではとても出来ない。
そして、多くの人が驚いたであろう宮崎優さん。
個人的には前から密かに来そうだと応援していたので、ようやく本領発揮といった感じで内心ガッツポーズ。
孤狼の血の阿部純子さん然り、白石監督の描く雨の夜に求め合ってその後あっさりと落としてくるヒロインが本当に良い。
是非この映画を足掛かりに様々な作品に出演してもらいたい。
あのラストカットを魅力的と呼ばず何と呼ぶ。
冒頭では川にパラパラと撒いているものが花びらに見えたため、何か分かった瞬間戦慄した。
自分も取り込まれてしまいそうになった、榛村の当然かつ無意識な罪の連続、継続、そして継承。
ただただヤバいやつ。
サイコパスの真骨頂を見た。
唐揚げさん、こちらにも失礼します。
そうなんですよね。私も阿部さんの目の雰囲気やら演技やらが、やたらと印象に残りました。
何だか深淵に引きずり込まれそうな。
「深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているのだ」みたいな。そんな感じ。