劇場公開日 2022年3月4日

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「どちらかと言えば「賛」」余命10年 さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0どちらかと言えば「賛」

2022年3月10日
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小坂流加さん原作の半自伝的小説を藤井道人監督で映画化した本作。

正直自分は"余命もの"は苦手な作品が多いです(無論、泣かせようとする感じが苦手だから)。特に近年公開されてる作品は国内外問わずに良い余命映画を観ていません。
そんな題材を、好きな映画監督である藤井道人監督が務め、更に撮影監督を今村圭佑さん、音楽をRADWIMPSが手掛けるという事で観てみようと思いました。

内容はいわゆる典型的な"余命もの"ですが、自分がここ最近観た新作の"余命もの"の映画では一番良かったと思います。

「余命10年」ということで、小松菜奈演じる茉莉達の約10年間という長い年月で主人公の生きざまや人間関係をラブストーリーとヒューマンドラマ要素で綴っていきます。
10年間という長い年月を2時間という短さでまとめていたので正直描き方が薄い所もあります。ただ、茉莉と和人の恋愛描写や家族との関わりを多めに描いた事で、主人公とのやり取りに終盤は感動が大きかったです。

また、演出面については藤井さんの演出術や今村圭佑さんの見事な映像が所々光っていました!
特に、会話のシーンで即興演技を重視したリアルな会話が良かったです。
今村圭佑さんの撮影で特に良かったのが、予告でも使われた花火の場面。
それから、終盤のとある場面ではテレンス・マリックのツリー・オブ・ライフを思わせるような、ファンタジックな夢のシーンを見ることができました。

また、小松菜奈の演技が素晴らしい!
茉莉という病気で数年しか生きられないという難しい役どころを表情豊かに演じられていました。
友達役の山田裕貴や奈緒、そして父役の松重豊も良かったです。

...ただ、小松菜奈の相手である和人を演じた坂口健太郎に関してはイマイチです。
所々で悪くない部分はあるものの、全体的に"演技してる感"のあるわざとらしさが目立ちました。

また、脚本は今回岡田恵和さんが担当されています。
岡田さんは、同じく余命ものの「雪の華」でほぼ事故レベルの駄作を書いたので、今作での一番の懸念材料でした。
そして、その不安はある程度的中してしまいました。
半分くらいは藤井さんの演出でカバーされてたものの、「雪の華」と同じようにのぺっとしていて臭い台詞が多いので、そこの部分で気持ちが映画から離れました。

これは完全にプロデューサーの意向だと思うのですが、「泣かせよう」としすぎ!
俳優陣の泣きの演技を過剰に多く入れたり、RADWIMPSの音楽が無駄にバラードの多い曲ばかりになっていたりと、感動を力ずくでさせようとする魂胆が透けて見えて嫌でした。

総評として、
よくある少し陳腐さがあるメロドラマ的な"余命もの"を、藤井さんのシャープな演出術や映像美、茉莉の生きざまを強めに描いたストーリー構成、そして俳優陣の演技でかなりカバーされていて結果的に良作になったと思います。

評価が高く、「泣けた!」という声が多数ですが、自分は正直目が潤むほどの感動は出来ませんでした。

さうすぽー。