「余命10年って長いの短いの?意外と恋愛映画じゃないパラレルワールドを生きている」余命10年 いも煮さんの映画レビュー(感想・評価)
余命10年って長いの短いの?意外と恋愛映画じゃないパラレルワールドを生きている
「全人類から10分ずつ寿命をもらい君の中どうにか埋め込めやしないのかい」
野田洋次郎が歌うこの歌詞に家族や愛する人を失ってしまう者全員が祈るであろう切なる願いがある。
映画「余命10年」はこれまでの余命悲恋お涙頂戴モノとは一線を画す出来である。
①まず余命10年って
私だって平均寿命まであと健康で生きられるのはあと20年あるかないかだ、とつい昨日考えていた。
それって長いの?短いの?
10年って長いように思えて年を取れば取るほどあっという間の月日だ。
70歳を超えた知人曰く「50歳を過ぎたら10年があっという間だから」。
だから思う。人は誰でも余命を生きている。それが長いか短いか、それは人それぞれ。
今作の場合、ヒロインがまだまだ若いということが悲しみを増幅させる。仕事したいし、恋もしたい、結婚もしてみたいし、子どもだって産みたい。そんな未来を夢見る年齢だからこそ、「余命」を言い渡されることで諦めなければならないことを考えるようになる。
「恋はしない」と。
恋をすれば互いに別れが辛くなる。5年後、7年後に死が訪れると思えば今この時も心から楽しめないかもしれない。が、それは同時に恋がしたい、という想いを掻き起こすことにつながった。だから出会ってしまう、ずっと一緒にいたいと思う相手に。
②意外と恋愛映画じゃない
確かに恋をして蜜月を過ごし、成長していく2人を描いてはいるが、そこにどっぷりではない。どちらかと言うと家族の物語に重心が感じられた。
ヒロイン茉莉を取り囲む、お父さん・お母さん・お姉ちゃん。みんな茉莉を優しく見守っている。
特にお姉ちゃん役の黒木華ちゃんが巧い。病気だからって甘やかさない、ドクターとのやり取りを聞いて涙する際もひとりトイレに駆け込んで嗚咽を堪える。
似てない姉妹と家族だけど、家族の普遍性が随所に感じられて、ここはやっぱり藤井道人監督の凄さだよなぁ、としみじみ。
愛する人を失ってしまう喪失の物語は多々あれど、本作では「ただいま〜」と帰ってくる娘の姿、迎えに行こうか?という親父の心配が繰り返し映し出されることで茉莉亡き後のこの家族の心情を思い浮かべることになる。
もう「ただいま」を言って帰る娘はいないのだ、と。
私自身も癌を宣告された時、自分も(痛み)が辛いけど死んでしまった後の家族の痛みを思うといたたまれなかった。(幸い今は寛解して元気にしてます)
③桜の突風と幸せな未来
花の画面から始まり桜の画面に終わる。その中で2人で歩いた桜並木で急な突風に身をすくませるシーンが2度。これは神風?
パラレルワールドがあるのなら本当は2人が結ばれて子供を授かる幸せな未来への道があったのでは?と思わせる。けど、こちら側では茉莉が病を患いカズくんは1人でも強く生きる道を選択する。
姉の結婚式と茉莉の結婚式の2度の結婚シーンが描かれるがどちらもそのカメラの美しいこと!海辺のデートや御徒町の宝石屋、谷中ぎんざの夕暮れ散歩、上野公園の花見などセリフなし回想(?)シーンの光のあたり方が本当に綺麗できれいで泣けてくる。
まとめ
余命幾許もないお涙頂戴映画と思って見にいくとなんか違うから。
そこにあるのは家族の普遍性。生命の有り様だ。
それを揺るぎなく感じさせるのが役者陣の厚い演技力。原日出子よし、松重豊よし、リリー・フランキー何やらせても巧し!奈緒ちゃんや裕貴くんも隣に居そうな友だちや同級生。
でも、間違いなく映画を崇高に仕立て上げてるのが主演、小松菜奈の演技力。黒木華とは別の儚さと芯の強さを感じさせ、強いからこその脆さみたいなものを見事に体現している。
こんにちは。
共感とコメントありがとうございます。
私は余命宣告されたら。。間違いなく坂口健太郎タイプです。(笑)
菜奈ちゃんの役、茉莉は難しい役どころだったと思います。
私も「余命10年て長いんだか短いんだか」と思っていました。そもそもそんな病気あるのかと。ただ、、、あるんですね。
そして10年だからこそ、諦められないこともあり。死にたく無いと本当に思うのだと思いました。
在り来りなストーリーでは無いですね。