「もっと過激でも良かったかもしれないが十分に楽しめる」翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて ありのさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと過激でも良かったかもしれないが十分に楽しめる
今回は関東地方から飛び出して関西を舞台に捧腹絶倒な笑いの世界が繰り広げられている。バカバカしくも下らないギャグの中に、関西人に対するディスりネタが豊富に仕込まれていて中々楽しめた。
メインとなるスタッフ、キャストは前作と同じなのでテイストはしっかりと引き継がれている。前作が楽しめた人なら今作も十分に楽しめるのではないだろうか。むしろスケールという意味では前作以上にパワーアップしており、このままシリーズ化を狙っているかのような勢いが感じられた。
物語は、例によって埼玉在住の一組の家族のドラマを起点としながら、ラジオから流れてくるカオスな世界が軽快なテンポで語られていく。ネタの伏線と回収も見え見えながら無理なく張られているし、終盤の盛り上がりもよく考えられていると思った。
個人的には、滋賀発祥の”ある看板”の意外な(?)活躍と、前作でも盛り上がった有名人対戦に笑ってしまった。また、埼玉県ネタは今回は舞台が関西ということで少ないのだが、それでもクライマックスにかけて大いに盛り上げてくれる。ここも楽しく観ることができた。
一方、ここはもう少し毒があった方が良かったのに…と思う個所も幾つかあった。
例えば、白い粉の扱いなどは明らかに麻薬的な何かのように描かれているが、コンプライアンス的な問題でこの辺りが表現の限界なのだろう。甲子園のネタにしてもそうなのだが、各方面に遠慮しているような向きが感じられた。
大規模公開のエンタメ作品ということを考えれば、余り過激な表現が出来ないというのも分かるが、どうせ続編を作るのならもっと攻めた姿勢も見せて欲しかった。
尚、劇中には様々な映画のパロディも登場してくる。中には劇場公開に合わせたかのようなタイムリーなネタも出てきて、このあたりは実に商売上手である。
キャスト陣は前作同様、夫々に奮闘している。中でも今回のヴィラン役片岡愛之助の嬉々とした怪演が印象の残る。
逆に、麗役のGACKTと共に前作を大いに盛り上げていた桃美役二階堂ふみは出番が少なくて少し残念である。