劇場公開日 2022年1月14日

  • 予告編を見る

「答えを観客に委ねる」スティルウォーター コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0答えを観客に委ねる

2022年1月20日
PCから投稿

予告やwebのあらすじからてっきり、真犯人を追いかける直情型親父の奮闘記みたいなアクションものかと、予想して行ったのですが……
全然違って、脚本に唸りました。

米オクラホマ州の都市スティルウォーターに住む、貧乏で学もなく、保守的な肉体労働者=いわゆるホワイトトラッシュ系「オキー(Okie)」のおっさんが主人公。
粗暴で嘘つきで逮捕歴もある、元アル中。
常に自分が正しい・自分に正義があると思い込み、信じたいものを妄信して暴走する。
そう、まるでトランプ支持者や、反ワクチン活動家たちのように。
そんな彼が、移民の街であるフランス・マルセイユへ赴き、殺人罪で服役中の娘の無実を信じて、独自に事件のカギを握る人物を捜索するうち、真実に気づいていく……
主人公の中で時間が経つごとに、ゆるぎなかったはずの「正義」が揺れていく。
何が「正義」なのか、主人公が自分自身に問いかけ、そして観客にも問いかける。
この映画は善悪や正義についての結論を出さない。
答えを観客に委ねる。
あなたのその正義は、本当に正しいのですか?と。
アメリカの人々の抱えた大きな問題を、マット・デイモンが演じるビルが体現していく。

鑑賞後、なぜだか『由宇子の天秤』を思い出しました。

コメントする
コージィ日本犬