劇場公開日 2021年10月15日

「3度の接吻」最後の決闘裁判 Kjさんの映画レビュー(感想・評価)

4.03度の接吻

2022年1月6日
iPhoneアプリから投稿

当時の風習かもしれないが、現代においても洋の東西で受け取り方に違いのある行為。ジェンダーの在り方に深く切り込んだ本作において象徴的なシーン、この異様な行いを三者の立場から見る。行いに変化をつけずに、切り取り方で表現するリドリースコット。羅生門的な作品において、これは新しい発明。自供におけるマットデイモンと他者の供述におけるマットデイモンが完全に地続きで、他者のようには映さない。「あっ、やっぱりお前やってたな」そう思わせる、演技が一貫している。
夫婦の性行為における表現の違いも目がひく。それには触れぬ男と触れる女。受け身だけでよい訳ではないと思うが、宿すことを目的としている行為としての認識が影になる。馬をモチーフとしてもってくる巧さ。
同性による性差別とセカンドレイプについてもかなり切り込んでいる。プロミストヤングウーマンにおいても描かれていたが、現代的なメッセージだろう。
戦闘や決闘における活劇としての充実度は、既にグラディエーターで実証済みであるが、それにも劣らぬクオリティ。窓の少ない中世の館における日光や暖炉などの光表現の卓越ぶり。14世紀のパリの絵の説得力が物凄い。建設中の大聖堂とセーヌ川の組み合わせは絵葉書の定番か。こういう絵作りは、日本でも試みて欲しいところ。
晴れの日はない中世にあって、決闘後も重たさがひきづる。ラストはどうしてもグラディエーターとの比較になってしまう。それでも役割が続く。漸く光が差し込むラスト。さて、これも物議を呼ぶところかな。絵の選び方はあったはずだが、その絵だけは少し凡庸かも知れぬ。

Kj