「壮大だがリアル」最後の決闘裁判 柿の種さんの映画レビュー(感想・評価)
壮大だがリアル
映像の美しさ、脚本の完成度、演技の見事さ、いずれにおいても高いクオリティを実現していると感じました。14世紀フランスの風景なども再現度が高く、見ごたえがあります。
一つの事件を多視点で語るという手法については、通常それぞれの視点で事実が全く異なるという見せ方にしたほうが、何が真実なのか分からなくなるという意味で物語に複雑さやリアリティを与えると思います。
この作品は「何が真実」を明確に提示しているため、鑑賞者に考える余地を与えていません。むしろヒロインの境遇を真実に据えることで、ミソジニーについて問題提起しているように見えます。
ただし、三視点の描写にそれぞれ微妙なズレを見せることで、人間の心理を巧み描いているという面白さがあると思います。
伝記映画すべてに言えることですが、これを本当の話だと思い込んで鑑賞するようなバイアスを持った映画の本質を見失うような見方だけは避けるべきでしょう。
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