「何故?今、中世の「決闘裁判」なのか?」最後の決闘裁判 わいちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
何故?今、中世の「決闘裁判」なのか?
気になっていた作品なので、遅ればせながら鑑賞して来ました。
構成的には、黒澤明の「羅生門」に影響を受けているのは一目瞭然。
黒澤監督の偉大さも感じますネ。
今でもレイプ被害の女性が、その後の迫害や中傷を懸念して事実の公表を躊躇うという心情は良く聞く話ですが、中世ヨーロッパの当時は更に酷かったという事が言えるのでしょう。
裁判という態を為してはいますが、客観的事実が有ったか否かという事よりも、当時の社会の秩序維持といった側面や政治的な思惑も強く感じられました。
勝った方の主張が正当と認められ、負けた死者に全ての罪が被せられる。
今の時代から考えれば明らかに理不尽とも思われますが、勝った側(生き残った側)は英雄と持て囃され、中世の閉塞社会に、一服の清涼感と秩序維持の効果をもたらしたのは事実であったのでしょう。
ラストシーンで、興奮の頂点に達した観衆から、殺せ!殺せ!の大合唱が発せられます。
ローマ時代のコロッセオでの剣闘士同士の殺し合いの結末を彷彿としました。
観衆は自身が安全である限りに於いては、血生臭い事柄が大好きで、決闘はその為の口実の様にさえ見えました。
日本でも江戸時代、敵討ちは許可を得て合法でしたが、お上(行政?司法?)が、自らの責務を当事者に丸投げしていたとも取れる訳で、極論、どちらかが死ねば事は治まった訳ですよネ。
男同士の名誉を賭けた殺し合いと、その狭間で耐えながらも強かに生き抜き、命を繋いで来た女性の姿を垣間見ました。
何故?今どき、中世の決闘裁判?…とも思いましたが、それって、外国の人から見たら「何故今どき、江戸時代末期の新撰組の映画がSF作品の金字塔・DUNEよりも、興行成績が上なんだ!」と同じ位愚問でしたネww
あちらの方々には、自分達を形作ってきた歴史そのものなんですから。
名匠リドリースコット監督による重厚で血塗られた歴史絵巻を堪能しました。