「神は、真実を語る者を守る。」最後の決闘裁判 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
神は、真実を語る者を守る。
映画は、「夫の友人にレイプされた妻」の訴えを、『羅生門』的アプローチで展開するストーリーと聞いていたので興味があった。三者それぞれの主観は価値観を反映するように異なり、どれも自分を正当化している。ただ、本家『羅生門』のように主張自体がまるで食い違うのかと思っていたが、基本的には"出来事"は三人とも同じであった。つまり、sex行為はあった。それが、レイプであることもニュアンスは違えども一緒だった。だから僕は、おや?ル・グリの主張は「してない」ではないのか、と思ったのだ。でもこれは中世ヨーロッパ、女性が政治的にも夫婦間でも道具として扱われていた時代のこと。男は、女の意志など関係なく単なる性欲の対象でしかなく、それを女性たちは諦めながらも受け入れていた時代だったのだ。それは、カルージュの母の蔑むような言葉からもわかる。まるで言葉の拷問のような裁判の尋問でもわかる。「快楽の頂点に達しないと受胎できない」という認識の時代だもの。
そしてカルージュの訴訟は、妻の尊厳のためなどではなく、あくまで自分の名誉のため。名誉のためなら命だって賭ける。そんな男たちの決闘の場は、他人にとっては見世物。王様にいたっては、滅多にない興行を楽しみにしてるが如き喜々たる笑みで眺めている。現代なら悪趣味の極みだが、これが当時はごく当たり前の感覚だったのだろうなあ。
勝者には、それまでの評価など忘れたかのような手のひら返しに惜しみない賛辞を送られ、敗者は、残酷な扱いを強いられる。現代社会なんて、動物を傷つけるだけでやいのやいの外野が騒ぐっていうのに。中世ヨーロッパは、怖い。
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