「みんな平等に悪い」最後の決闘裁判 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)
みんな平等に悪い
「誰が一番悪いのか」と言えばみんな平等に悪いです。全員完全な悪ではないんです。善も悪も持ち合わせているけど、つい自分に都合よく考えてしまう。ごく普通の人々ばかりです。そこに他人の悪意や煽りも加わり、こじれまくった末の決闘裁判だったんだなと思いました。自分は現実の世界を生きているけど、物事は常に俯瞰して見るようにしようと思いました。
とは言え嫌悪感という点ではル・グリがピカイチです。日本にもこういう犯罪者がいましたよ。そいつは乱暴の後で被害者に「連絡して」と名刺を渡して逮捕されました。相手も喜んでいるはずと思っていたわけですよね。ル・グリの場合はさらに酷くて、「人妻との恋に懊悩する自分」に陶酔しているようにも感じました。こういう男は女性からするとものすごく怖いし気持ち悪いです。あんな行為で相手が愛を感じると思うのか?どうしてそこまで都合よく思い込めるのか?何が悪いのかもわかってない気がします。
それからマルグリットへのセカンドレイプや女性達からの無理解が怒りを通り越して悲しいです。「あなたも感じてたでしょ?」「ハンサムだと褒めてたそうですね。まんざらでもなかったでしょ?」とか無理です。私だったら戦えず泣き寝入りしています。彼女はあの時代のこの人々の中で本当によく戦いました。
他には中世の騎士階級の生活が垣間見えて興味深いです。普段着はすごく地味。というか着古しでぼろぼろに見えます。戦いのない時は使用人と肩を並べて働いてたり金策に悩んだり。召使いも馬車で一度に運べるくらいしかおらず、優雅な生活とは程遠い。中小農業経営者なんですね。
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