劇場公開日 2021年10月15日

「匠の技、流石のリドリー師匠」最後の決闘裁判 Film_Montageさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0匠の技、流石のリドリー師匠

2021年10月21日
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リドリー・スコット監督作品と知って劇場で鑑賞。

感想はただただ上手いなと感嘆しました。
リドリー・スコット監督とクリント・イーストウッド監督は歳を重ねる毎に演出の腕が冴えているように感じる。

表現に無駄が無く、2時間30分近い時間も長さを感じなかった。

物語は100年戦争時代のフランスで実際に起こった裁判を基に映画化。

内容は親友同士だった二人が、それぞれお互いの持つ名誉や土地、妻を望み仲違いをして行きその果てに妻を犯される。夫は平等な裁判を求め神の審判による決闘裁判をという流れ。本当に罪を犯したのなら神が天罰を下し罪人は死ぬという解釈。キリスト教を信仰する中世ならではの裁判だ。

もちろん訴える方にもリスクはある、夫も死ぬかもしれないし、夫が死ねば訴えた妻も相手の名誉を傷つけ嘘をついたと処刑される。

本当にあったのか無かったのか、調べる術がない時代の事なので嘘なのか、妄想なのか判然としない。その事を上手く表現する為の演出が素晴らしかった。

物語の構成は主要三人のそれぞれの目線で同じ時間軸を追体験していく。その三者三様の描かれ方も本人が感じているように、同じシチュエーションでも微妙に変えていて、本人の思い込みやその時の感情が違う演出がなされていた。その事で真実なのか妄想なのかを感じさせる手腕は流石の一言。だからと言って結末があやふやではなく、しっかりと描かれているので安心して観て欲しい。あくまでも細かな要所要所で異なる描き方をする事で、三人それぞれが感じていた本心が浮かび上がる演出をしていると言うこと。

今年観た映画の中で一番の作品。

Film_Montage