「『グラディエーター』ミーツ『羅生門』それぞれの視点 = "真実"で紡ぐ歴史ドラマ in 女性に権利など無かった時代に」最後の決闘裁判 とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
『グラディエーター』ミーツ『羅生門』それぞれの視点 = "真実"で紡ぐ歴史ドラマ in 女性に権利など無かった時代に
CHAPTER ONE
名を名乗れ!私は嫉妬深い男だ
男の見栄や誇りなんかのために道具として扱われる女性(性)。まさしく今こそ語るに相応しい題材。女性の方が遥かにつらい思いをしているにも関わらず、男は下らないことで恥だと騒ぎ立てる。当人 = (跡継ぎを生むことだけを期待される)女性の気持ちなどそっちのけモノみたいにぞんざいに扱って。命すらも蔑ろにするのか。馬の行為とも重ねる。
女性が暴力を振るわれても伴侶である男性の所有物・財産を傷つけたこということでしか訴えられない、裁けない。そんなふざけたことが国家規模で世の中的に罷り通っていた。"男ってバカ(どころかクソ)ね"映画であると同時に"今こそ声を上げ、立ち上がれ!"映画。ディズニー傘下になったことを考えると攻めた内容、であると同時に進んだ内容。
CHAPTER TWO
the truth according to ある映画ファン
小中高と自分の中でザ・映画を象徴するヒーローであったマット・デイモン(& 盟友ベン・アフレック脚本製作連名) × 大学生社会人の現在進行系でお気に入りアダム・ドライバー。リドリー・スコットの二本柱(?)SFと歴史モノ、『オデッセイ The Martian』に本作でその両方に主演したデイモンに、小規模インディー良作/アート系から活躍の幅を広げて今や名だたるあらゆる監督に繰り返し起用されるなど続くリドリー・スコット監督作『ハウス・オブ・グッチ』(楽しみ!)でも出演しているドライバー。演じるキャラクターとしては呆れるほどムカつくけど役者としては最高すぎる2人の意地やプライドをかけた戦いに至る経緯、世紀の裁判の行方。
命をかける騎士 vs 領主(金髪ベン・アフレックの胡散臭いザ・権力者感!)の寵愛を受け安全地帯で私腹を肥やす従騎士。かつての友人同士が槍や斧、武器を交えるまでを時間をかけて丁寧に描く。その過程でキャラクターを掘り下げる。
CHAPTER THREE
真に価値ある題材を伝える、一見の価値ありな演技対決!しかし、本作のMVPはそうした作品のテーマを体現するジョディ・カマーか。自立した女性像を打ち立てる。例えば本作に嫁姑問題はあるけれど、戦場に繰り返し出ていってはいつ死ぬか分からない男たちのPTSD的問題はここには無い。それは何故か?言わずもがな取捨選択、本作の視点がそれを選び取ったから。
『デュエリスト/決闘者』から本作『The Last Duel ラスト・デュエル』へと、決闘は時代を超える。一瞬でリドリー・スコット監督だと分かる画や色合い、雰囲気そのままに見事な語り口にグイグイと惹かれていく。本作(が扱い描く人間の愚かさや醜さ)から逃れても追いかけてくる。薄暗い作中の空色同様、最後まで見てもここにカタルシスなど無い。最大級の賛辞としてこの齟齬・空虚さを噛みしめるばかり…。(ル・グリはもちろん許されないが)本当に裁かれるべきは、それらを良しとする時代の流れ、風潮・社会通念すなわち誰も疑問を挟みすらせず、おかしいと声を上げようものなら黙殺される(そして大体男が得をする)"常識"だ。普通を疑え!
She never remarried.