「劣化版ブラックスワン」ラストナイト・イン・ソーホー 蜷川吝塀さんの映画レビュー(感想・評価)
劣化版ブラックスワン
昨夜(2024/04/21)観ました。
プロローグ、祖母と暮らす実家からロンドンへ向かい、寮に到着して、その後寮を飛び出し別の部屋を借り、不思議な世界へ行く辺りまではとても面白く、工夫を凝らした映像を交えて観ることが出来ました。
しかしその後の展開は、ただただ病んだ女が狂って、方々に毒を撒き散らすだけの作品だと感じてしまいました。これだけ書くとナタリー・ポートマン主演のブラックスワンも似た様なもの、と言われてしまいそうですが、あちらの作品では実の母親が既に病んでおり、そんな家の事情を抱えながらもバレエに打ち込んでいる為、故郷で祖母の反対を押し切って単身ロンドンへやってきた本作の主人公であるエロイーズとは土台から状況が異なっています。
そして物語の佳境から、ずっと彼女に良くしてくれている青年に対して、ただのひとつのお礼すら言わず、危険な目に遭わせたり、毒づいたり、女人禁制の部屋に自分の意思で招き入れたにも関わらず、大家の婆ちゃんに誤解される行動を取ったりなどが続き、ただただ不快でした。彼は黒人男性なので、その誤解から部屋に駆けつけた警察官に射殺されていたかもしれません。たとえロンドンとはいえ、白人と比べれば黒人の立場は今も危ういのです。偏見を持つ人や差別主義の人も当然います。
表現の自由や、映画の世界はファンタジーなどのフォローができるかも知れませんが、私は米国内で幾度ともなく起きている黒人差別による事件が頭をよぎってしまって、割り切って観ることが出来ませんでした。
そして寮のルームメイトの女に対しても何も起こらない仕様は、勧善懲悪を期待していた私としては、甚だ消化不良で、怒りすら覚えました。
全ての伏線を回収する必要はありませんが、「あの女にひと泡くらい吹かせてやれよ」が本音です。
美しい映像の迫力に、見事にシンクロする音響は観る価値は十分あると思います。
ストーリーの面では…、奥歯に何か挟まって気になるのが好きな方は是非ご覧ください😅