「タイムリープ・ホラー」ラストナイト・イン・ソーホー bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
タイムリープ・ホラー
『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライトが脚本と監督を担当し、現代と1960年代のロンドンを舞台に、行ったり来たりするタイムリープをホラーに組み込んだ、サイコロジカル・ホラー作品。最初は、今ひとつ入り込めなかった展開だが、霊が見え、殺人が絡み始めると、ダークな色合いが濃くなり、上質なサスペンス・ホラーとしての面白さを備えた作品となっている。
イギリスの田舎から、ファッション・スクールに通うためにロンドンの出てきたエリー。しかし、寮生活に馴染めず、老婦人が営むアパートの部屋を借り、その時から、眠りにつくと、1960年代のロンドンにタイムリープする夢を見るようになる。そして、その夢の中で、歌手志望の美しいサンディーと出会い、エリーが憧れていた華やかな都会を象徴するかのような彼女と、同化体験をするようになっていく。
しかし、サンディーは、恋人のジャックに唆されて、ストリップ・ショーに出演させられ、売春までも強いられるようになる。エリーは、サンディーの苦境を案じるあまりに、現実と夢の区別がつかなくなる中、とうとう、サンディーがジョンに殺されるシーンを目撃し、精神が崩壊していく。
そして、最後のクライマックス。それまで見過ごしていた布石が、いくつか繋がりをみせる中で、一度だけでなく、二度までに渡る、大どんでん返しの意外な真相と展開に、脚本の妙を感じた。
主演のエリーには、『ホビット 決戦のゆくえ』でハリウッド・デビューした、トーマサイン・ハーコート・マッケンジーが、精神を崩壊しながらも真相を明らかにしていく女性を演じている。また、サンディー役には、『シェフ』や『オールド』にも出演し、一目見たら忘れられない顔立ちで、独特な美しさを兼ね備えている、アニア・テイラー=ジョイが演じている。