「口あんぐりの怒涛の展開」ラストナイト・イン・ソーホー よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
口あんぐりの怒涛の展開
霊が見える力を持った少女エロイーズ(エリー)は、ファッションデザインの道に進むためロンドンの学校に進学したが、寮での狂騒的な同級生との生活に耐えられず、一人暮らしを始める。そこで彼女は夜の眠りの中で、60年代に生きていたと思われる同年代の少女アレクサンドラ(サンディ)の意識にシンクロするように、彼女の体験を見るようになる。歌手志望のサンディはナイトクラブに自分を売り込み、夢を叶えようとする。自らも60年代の音楽やファッションが好きなエリーは、奔放なサンディの生き方に憧れと共感を覚え、いつしかその追体験を楽しむようになっていった。ところが、サンディはマネージャーの男ジャックに騙され、次第に転落の道へと進まされていく。サンディを救いたいエリーだったが、ついに悲劇が起きる。
サンディの華やかな記憶を追体験するシーンでは、あの手この手を尽くした映像のマジックが見受けられ、ここだけでもかなりの見応えがあるのだが、悲劇が起きて以降の畳み掛けるような展開と、最後に訪れるどんでん返しが実に素晴らしい。
そして忘れてはいけないのだが、この映画はジャンルとしてはホラーなのだ。そこまでどぎつい描写があるわけではないのだが、意外に怖い。エリーにとって楽しいはずだったサンディの記憶の追体験が、どんどん恐ろしいものに変わっていく辺りは、わたしのようにホラーが苦手なものには結構辛いものがあった。
ただ、最終的には展開の妙にすっかり呆気にとられ、終始口をあんぐりしながら引き込まれていたので、あまり気にはならなくなった。
私もそうなのだが、60年代イギリスの文化が好きな者にとっては、当時の音楽などもなかなかに楽しい。総じて、好評価に偽りのない良い映画だった。