「弱いヒロインに共感出来ず。」ラストナイト・イン・ソーホー ドラゴンミズホさんの映画レビュー(感想・評価)
弱いヒロインに共感出来ず。
●ヒロインも過去の女も共感できない。
特殊能力で過去の人物に共感するところから物語が進むが、あくまで夢想。なぜヒロインが過去の女の死の真相を探る行動するのか、いまいち動機がうすい。だって夢で観た過去の話なんだから。
ヒロインは過去の女をマネているだけで、大きな成功を得ているわけでもない。女の存在が今の自分を支えている…というような強い絆を感じない。
そもそもこのヒロインは都会っ子に邪険にされて、イジケただけの人物だ。物語を牽引するだけの劇的欲求に欠ける。しかも過去の女も言わば自業自得のサイコでしかない。何故なら例え男に利用された不幸であっても、彼女自身が選択した生き方だから。嫌ならば逃げ出さえばいいところを、男たちを殺すことで憂さを晴らすなんてまったく共感できない。例えば病気の母がいて生活苦のためにその道を選ばなければならなかった。加えるならそのような境地に男たちが画策して追い込んだ…というような背景があればまだ女が殺人鬼になったことに納得できる。いじめられっ子のヒロインも夢のために苦渋を耐える覚悟があったなら、いじめっ子(たいしたいじめやってないし)と折り合いをつけた人間関係も築けたはず。
ヒロインも過去の女も自分の弱さで落ちているのであって、共感というか同情がわかない。
●ヒロインの劇的欲求が薄いので、何で楽しませるかの要素が中途半端。
前半は過去の女に共感をうけながら進む夢追い物語。後半は女の死の真相にせまるサスペンス。だが1本の映画としては何がやりたかった映画なのか印象がぼやけてしまう。
青春、ファンタジー、サスペンスといろいろ盛り込んだ上で作品として成立するには、ヒロインの彼女が何を目指すのかが強く筋を通してないと、ただ巻き込まれた女の子のフラフラに観客は付き合うことになる。
●途中で女の正体がわかってしまう。意外性を狙うならよほどうまく伏線しないとバレてしまう。