「ソーホーって何だ」ラストナイト・イン・ソーホー kekeさんの映画レビュー(感想・評価)
ソーホーって何だ
という疑問から興味を持った映画。
過去からの執拗なハラスメントに悶える女学生の大人向けディズニーなドラマティックホラー。
[ストーリー]
元々幽霊が見える性質の子で、
同じ性質を持つために自殺した母親がときどき視界に映る。
ロンドンのデザイン学校に合格してウキウキ生活を夢見る。
そしてさっそくクラスメイトから「田舎者」としていじめられる。
ここまではまあ普通(いや普通でない)で、
いじめがエスカレートしそうなところで寮を抜け、ソーホーという地区にある屋根裏部屋を間借りすることに。
しかしその部屋で眠る度に過去の他人の追体験をするようになる。
スターを夢見てカフェ・ド・パリに乗り込む美女サンディ。
絵に描いたように支配人たちを虜にする。
主人公が大好きなファッションをしているものだから、
夢から覚めてさっそくデザインに起こしてみると大好評。
これはしめたと続きを見ていく。
自分もオールドファッションを真似てイメチェンしたりする。
お金が必要になったのでアルバイトを始める。
そのアルバイト先にときどき現れる不気味な老人は、やたらと過去のことに詳しい。
気をつけろと主人公に告げる。
追体験の様子が変わり、サンディは主役どころか脇役ダンサーとして娼婦に近しい格好になっていた。
男に可愛がられなければ這い上がれない。どうしようもなく闇に落ちていく。
すると現実でも男の幽霊がコダマみたいに出没して存在をアピールしてくる。
主人公は慄き、幽霊だと勘違いして現実の人をハサミで刺しそうになり異常者扱いされ、
ボーイフレンドができてもベッドで幽霊を見て「離れろ!」と絶叫してめちゃくちゃ心配される。
否応なしにやってくる追体験でいよいよサンディはベッドで支配人に殺されてしまう。
主人公はこの老人が犯人だと思って問い詰めたところで事故死。風俗取締の元警察官だったことが発覚。
いったい犯人は誰なのか。幽霊も鬱陶しい。主人公のメンタル限界。
田舎に家に電話する。「もう帰りたい」
屋根裏部屋の大家に相談したらまんまと毒薬を飲まされる。
ボーイフレンドが助けに来て刺される。
実は大家の若い頃が例のサンディだった。彼女は部屋に招いた男を殺しまくっており、
主人公が見た光景も、真実は彼女が殺されたのではなく「殺した側」で、
幽霊たちはすべて彼女が殺した男たちの亡霊だった。
「とりあえず死んでおくれ」とドタバタするうちにボヤが起き、幽霊は「助けて助けて」と訴えてくる。
大家はその怯える幽霊たちを見て「もういいか」と諦めて炎の中に身を投じる。
後日、主人公もボーイフレンドも復活。ファンションコンテストも大成功。
母親の霊も何やら嬉しそう。サンディの霊も「やるじゃん」とタッチしてハッピーエンド。
長い。ちょっと盛り込みすぎだがテンポが良かったので苦にならない。
トーマシン・マッケンジー演じる主人公の弱々しさも、良い意味で観る人に注意を向けるのではないだろうか。
間接的な描写や言い回しが多いものの、ある程度は説明しているので意味不明でもどかしく終わることは無いかと。びっくり要素はそれなりにある。
ところで、レイトショーから颯爽と退館して受付も静まり返った空間を切り、梅田の街に出ると、
「まだ映画の世界だったのか」と言わんばかりのヘッドライトと通行人の雑踏感。
おかげでいつもより多めに余韻に浸れたので、ここはぜひ映画館で。
今年の映画おさめはまだ決まらない。