「反撥」ラストナイト・イン・ソーホー ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
反撥
アントマンの関連動画を見ていた際、エドガー・ライトという監督が原案に携わっているという事を知り、その流れでアマプラにあった「ベイビー・ドライバー」を見て、圧倒的なセンスの良さを見せる音楽に、逃げ屋という珍しい職業をベースに主人公を描く物語にとても惹かれました。そんな監督の久々の作品、公開初日こそ観れませんでしたが、なんとか急ぎ目で鑑賞。小さいスクリーンが勿体ないくらいの盛況っぷりでした。
今作、なんといっても色彩豊かな映像に、心地の良い選曲が目と耳をたくさん刺激してくれました。上映前に光についての注意書きが書かれていましたが、それも頷けるくらいのキラキラさでした。主人公エロイーザの行動に合わせるように軽快なものから重厚な音楽が幅広く流れてテンションが左右されまくりました。サントラを聴き込みたいくらいです。ロンドンの街並み、特に夜中の時に見る夢の中の60年代の景色と今のロンドンの街並みの光り方も凝っていて素敵だなと思いました。
第六感、幽霊が見えるという能力を持ったエロイーザの苦悩が全編に渡って描かれます。この苦悩、前半まではエロイーザの視点と重ねて見れてハラハラするんですが、後半になっていくとエロイーザが狂っていくので、そのテンションについていけるかどうかで評価がキッパリ分かれるなと思いました。自分は後半疲れてしまったタイプです。まぁ前半のパリピ系のノリだったり、共謀しての侮辱だったりも辛い展開ではありましたが。
夢の中で見た少女・サンディがソーホーの街でどう成り上がっていくのかをエロイーザは鏡越しで眺めていますが、この映像の魅せ方上手だなと思いました。違和感を感じないカメラワークに惚れ惚れしてしまいます。サンディが仕事のために男に尽くしていく、夢から遠ざかっていくという描写も自然な流れで描いているのも見事です。
この作品R15指定なのですが、せいぜいPG12くらいで良いんじゃないかなと思ったくらいグロ描写は控えめです。首をスパッと切ったり、思いっきり腹部や背中にぶっ刺したりしますが、全然かわいいものだなと思いました。最近映倫の指定はちょっと過剰すぎる気がします。
幽霊の様子の演出はなんだかJホラー風味がありました。大量の霊が助けを求めていたり、ジャンプスケア的な演出が目立っていました。ワッと驚かすのは苦手なのですが、今作にはマッチしているなと思いました。ホラーよりスリラーで売り出した方が良かったのでは…?
と、中盤までは中々楽しめたのですが、後半になっていくとどんどん演出がくどくなり、テンポも悪いなと思いました。ひたすら逃げ惑うのもやたら長いし、バーの老人なんかミスリードがすぎると思いました。あと映像的にどう見てもサンディが殺されているように見えたのに、サンディが逆に殺していたというのも驚きはしましたが、説得力には欠けるなと思いました。
サンディがエロイーザの住む家の大家というのもなんだかお察しな感じでした。シリアルキラーだったのかといううちに潜める狂気が割と漏れていたのも惜しかったです。ダイアナ・リグさんの存在感が凄いなとは思いました。
と、乗れない展開が続いた終盤ですが、デザイナーになるためにファッションショーを開き、行動を起こし、エロイーザが前へ進むシーンを先程までの暗い場面とは裏腹に明るいところで行われていたのも印象的です。鏡越しにサンディが覗いていたのもにくい演出で好きでした。
物語の中で良し悪しがはっきりと分かれる作品でした。海外での高評価っぷりに期待しすぎていたのもあり、少し物足りない感じはありますが、ちゃんと楽しめるところは楽しめたので良かったです。次回作に期待します。
鑑賞日 12/12
鑑賞時間 16:10〜18:15
座席 F-1