「クレバーなプロットと目眩く映像美のサイコ・サスペンス・スリラー。エトガー・ライトという監督は音楽も含めセンスがよい。アニャ・テイラー=ジョンのファム・ファタール役も大変宜しい。」ラストナイト・イン・ソーホー もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
クレバーなプロットと目眩く映像美のサイコ・サスペンス・スリラー。エトガー・ライトという監督は音楽も含めセンスがよい。アニャ・テイラー=ジョンのファム・ファタール役も大変宜しい。
①私はヘレン・レディのバージョンでしか知らなかった『You're My World』のオリジナル・バージョン(シラ・ブラック歌唱)が映画の中で重要な役割を果たす。他にも懐かしい60年代のポップ・ソング が映画のあちこちで晴れやかに或いはBGMとして流れてくる。それだけで気に入ってしまった。②前半の60年代の華やかなサンディのロンドン生活にリンクしていたエリーの楽しい筈のロンドン生活が、段々不穏な色に染まって行く60年代のサンディのロンドン生活に合わせて現代のエリーの生活をいつの間にか恐ろしいものに変えていく流れが自然で上手い。③ロンドンと言えばシャーロック・ホームズ、ロンドンとコーンウォール(半島)と言えばアガサ・クリスティだが、クライマックスがミステリー仕立てになっているのも嬉しい。④イギリスの名女優ダイアナ・リグ(おばあちゃんになった!)久々の登場だが、ただの下宿屋の大家役?と思っていたらやはりやはり…の展開でした。それにしても、エリーが迷いこんだのが60年代のロンドンであることが一発で視覚で判る、映画館にかかったショーン・コネリーの『007サンダーボール作戦』の看板。二重の意味での楽屋落ちネタに嬉しくなった。⑤それに、エリーのおばあちゃんがリタ・トゥシンハムだったとはね。⑥逆に名優テレンス・スタンプが何やら謎めいた男に扮して(ある意味テレンス・スタンプのステレオタイプ・キャラ)事件の鍵を握る役かと思えば単なる脇キャラだったという肩透かし。これは『ベイビードライバー』でのジェィミー・フォックスの扱い方(アカデミー賞主演男優賞受賞者なのに出てきて直ぐ死んじゃう)に共通している。⑦ラスト、本当に悪いのは連続殺人を犯していたサンディてはなく、サンディの夢を踏みつけにして食い物にしていた男たちであると結論を振り切ったところが映画として潔い。