「戦争とJAZZ」ヴィム・ヴェンダース プロデュース ブルーノート・ストーリー ken1さんの映画レビュー(感想・評価)
戦争とJAZZ
今年2月、ロシアがウクライナに侵攻した。一日も早い停戦を求める声が世界中で叫ばれているが、一向に出口は見えない。歴史は繰り返すというが、戦火の拡大が不安だ。ウクライナのゼレンスキー大統領は、米議会でロシアの侵攻を喩えて「真珠湾攻撃」と言ったそうだが、プーチンの暴挙はポーランドに侵攻したヒトラーに喩えることもできるのではないのでだろうか。
歴史にイフは無いのだが、この映画で明らかになるのは、ブルーノートレコードというレーベルを作った2人のドイツ人は、ナチス政権下でのユダヤ迫害から逃れアメリカに渡ってきたということだ。ならば、ヒトラーがいなければ、あの名作の数々を生み出したブルーノートレコードは、なかったということになってしまうじゃないか!でも考えてみれば、黒人ミュージシャンが魂の音楽を生み出すことができたのは、酷い人種差別に苦しんでいたからかもしれないと思うと、悲しい歴史があるからこそ、それに対抗する芸術が生まれてきたといえるのかもしれない。
この映画を観てわかることは、力を持つ者が力で力の無い者を従わせようとするとき、芸術はより美しく、より強く、人の心を打つものになるということだろう。今のこの現実が、より強く美しい芸術を生む力になり、戦争と差別、貧困を無くす原動力として人々の心を動かすに違いない。
僕は今、ブルーノートの名作を聴き直しながら、新しいムーブメントを生み出した先人たちの愛に触れている。その愛が、ウクライナの人たち、あるいはこの戦争を支持する者にも届いてほしい。この世界から暴力という手段が永久に無くなり、誰もが幸せに暮らせる世界が来るよう心から祈る。
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