劇場公開日 2022年9月16日

「菊野商店街のアイドルが失踪して、殺されていた。」沈黙のパレード 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0菊野商店街のアイドルが失踪して、殺されていた。

2023年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

歌の上手い並木佐織(川床明日香)が行方不明になってから3年。
「なみき食堂」の看板娘だった少女は、最悪の形で帰ってきた。
東京都菊野市から200キロも離れた民家の焼け跡から
白骨体で発見されたのだ。
容疑者はその家が実家だった男・蓮沼寛一(村上淳)
15年前の少女誘拐殺害事件の容疑者で、証拠不十分で無罪になった男だ。

ガリレオシリーズの映画第3弾。
「容疑者Xの献身」そして「真夏の方程式」から9年目。
待望の新作だ。
ご存知、偏屈で屁理屈をこね回す物理学者・湯川(福山雅治)
バディの内海(柴咲コウ)と大学からの親友・刑事で係長になってる
草薙(北村一輝)
3人でこの複雑で入り組んだ「知恵の輪」のようぬ解けないパズルに
挑む。
難事件だ。

原作は未読ですが、東野圭吾ファンです。
20冊以上は読んでいます。

映画は菊野商店街の夏祭り。
のど自慢大会のコンクールで、
高校の制服姿の並木佐織が「ジュピター」の英語バージョンを歌うシーン。
ここで「ジュピター」が大好きな私は、あっという間に引き込まれて
感動のゾーンに入ってしまいました。

佐織ちゃん発見の捜査会議が開かれ、遅れて入ってきた草薙は、
蓮沼のパネルに貼り付けられた写真を一目見て、激しく嘔吐する。
15年前、少女殺害事件から完全黙秘で逃げた男・蓮沼は草薙のトラウマに
なる程憎い相手だった。

蓮沼は間もなく逮捕される
家宅捜索で佐織さんの血の付いた蓮沼の作業着が発見される。
DNA鑑定で佐織さんのものと一致する。
しかし蓮沼はまたも完全黙秘。
警察は証拠不十分で釈放する。

この決定に納得出来ない佐織さんの両親(飯尾和樹と戸田菜穂)
工場の店主・戸島(田口浩正)、本屋の店主・宮沢(吉田羊)
佐織の恋人・高垣(岡山天音)、
そして佐織の歌手デビューを応援していた作曲家の新倉直紀(椎名桔平)と、
その妻・新倉瑠美(檀れい)

全員が菊野商店街の夏祭りの仮想大会の日にある計画を立てた。
「蓮沼寛一殺害計画」だ。

そして事実、
現実に蓮沼寛一は殺された。
唯一の友達で家賃を折半すると転がり込んだ増村(酒向芳)の住まいの
狭い部屋から、原因不明の酸欠による窒息死で死んでいた。

いよいよ湯川教授の出番・・・酸欠窒息死の謎を湯川は、
科学者としてどう解くのか?

福山雅治は本当にガリレオが好きなのでしょうね。
ドラマシリーズを入れれば15年もガリレオ・湯川を演じている。

屁理屈は健在。
でもその屁理屈にも湯川の優しさ暖かさが隠れていて、
本当に愛すべき科学者探偵です。

今回はラストの30分。湯川は、
二転三転する真相を、精神分析も交えて人間の深層心理に迫ります。

蓮沼寛一という最低で最悪で最強のモンスター。
蓮沼はそこまで憎まれ、グループ殺人とも言える復讐劇が、
実は私怨の絡む事故的側面と、そこ付け込む蓮沼の悪辣さ。
真相が湯川によって遂に暴かれます。

私は、1984年の「城丸君事件」を思い出しました。
城丸君という小学生男子が誘拐されて殺された。
それも被告女性の以前の婚家が焼けて元夫が死亡。
その焼け跡から城丸君の白骨が発見されたのです。
被告女性は完全黙秘を貫き無罪になり、多額の賠償金が支払われた。
(今でも抜群のスタイルで美しい被告の顔が思い出されます)

この事件をモデルに書かれたのは確かだと思われます。

それにしても被害者と家族のの無念は計り知れません。

ひとつの殺人事件から生まれる波紋・憎悪・確執。

司法をくぐり抜ける悪人。蓮沼のようになんの反省もない、
血も涙もない犯人。
(湯川先生いわく、血と涙は同じ。血からヘモグロビンを抜いて
濾過したものが涙。従って血も涙も同じ成分・・・だそうです)

福山雅治は氷小豆を食べる姿さえ絵のようでした。
エンドロールで柴咲コウの歌う福山雅治作曲の「ヒトツボシ」。
そして若き日の湯川のガリレオの長年の名シーンが流れると、
涙が溢れて堪えきれませんでした。

ちょっと長いし複雑なので集中するのが大変な映画でしたが、
その分、感動も大きかったです。

また湯川、内海、草薙のトリオで新作の「ガリレオ」を
出来ることならなるべく早く、お願いしたいです。

琥珀糖
みかずきさんのコメント
2023年3月5日

共感ありがとうございます。

今回のレビューは語尾を強めていますね。
作品内容によって、語尾を変えるは流石です。

本作では難しい数式が無く、物理学者ガリレオらしくないとの意見もありますが、学者らしさはありました。
何事も鵜呑みにせず、疑うこと。仮説を立て立証してみること。
学問に取り組む時の基本的な姿勢を今回のガリレオは見せてくれたと思います。

因みに、私は、レビューの長さは極力800文字前後で統一しています。
私が投稿しているキネマ旬報の投稿条件であることが最大の理由ですが、
レビューを読む時間を考えると、800字前後が上限のようです。
原稿用紙2枚相当ですので、長過ぎず読み応えがある字数だと思います。
参考にして下さい。

追伸:
劇場鑑賞はされないのですか?

ー以上ー

みかずき
caduceusさんのコメント
2023年3月5日

琥珀糖さんコメントありがとうございます。私はテレビを見ないので、今一つ付いていけてないのかもしれません。シリーズを通して見ていないと面白さがわからないのかもしれませんね。

caduceus
光陽さんのコメント
2023年3月5日

どんどん人間らしく?なっていく湯川教授の更なる続編が観たいです。

光陽