「流浪の月とは・・・」流浪の月 mark108helloさんの映画レビュー(感想・評価)
流浪の月とは・・・
愛情を受けれなかった子等が世代を超えて寄り添う物語。ここで初めて李監督は物語を捨てる。一見すると緩慢でおぼろげな印象を強く持ちがちな作品と言えるが、徹底的に捨てた映像の屍の上に成り立つ詩編という見方が正解かも知れない。物語の推力はすべて捨てていて、事実の断片だけを繋いで映像と映像の行間は徹底的に観客に投げかけられた。この作品をサスペンスとして成立させるために取った手段が徹底した編集で、エンドロールのサービスフィルムにその血のにじむような編集の凄みが取り上げられている。その為制御された情報の元、進む物語はもはや物語の体をなさず散文詩の様な装いとなる。それは少しでも気を緩めると意識を飛ばしかねないギリギリの編集がなされていて、役者たちはもとよりなによりそこにフィルムを回し続けた者たちの怨念が作品全体にのしかかってくる作りである。行間を読みそこなうとたちまち迷宮に迷い込む。まさにサスペンス・ミステリーの真骨頂である。
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