劇場公開日 2022年5月13日

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「“誰悪”社会」流浪の月 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“誰悪”社会

2022年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

中々の力作でした。そして色々と考えさせてくれました。
そしてこの作品、まず俳優陣の気合に気圧される。俳優なら挑戦したい作品であることは間違いない。まず、各俳優に対して思ったこと。
・広瀬すず…大人になったなぁ~。最初姉ちゃん(アリス)かと思ったが、本作はすずの役で間違いない。
・松坂桃李…いつも作品チョイスが素晴らしい。優秀なブレーンがいるのかな?
・横浜流星…存在感大。一番の儲け役
・白鳥玉季…新星登場。宮崎あおいの子役時代にソックリ。
・増田光桜…子役の鏡。上手
・内田也哉子…これも上手い。
・趣里…名脇役であり適役
・三浦貴大…同上
・多部未華子…損な役回り(無名女優で可の役柄)
・柄本明…意味なしキャラ(友情出演か?)
って感じで、(下2名以外の)役者映画でした。

物語については、文と更紗の運命的出会いと別れと再会の物語であるのだけど、ラストは別にして、この物語の悲劇は結局誰が一番悪いの?とつい考えてしまいます。
勿論、原因は一つではなく様々な問題や要因が重なり合っての悲劇ではありましたが、過去パートでは“幼児監禁罪”が成立するので仕方ないにしても、現在バートの方は社会が正常で健全であれば、ひょっとしたら避けられたのではないかという苛立ちを、観客目線として感じて辛くなってしまいました。

ここからは、映画から脱線します。
最近“誰得”という言葉がよく使われますが、本作の現代パートについては“誰悪”と言いたくなる様な話でした。
勿論、文の母親、更紗の従兄の“悪”、亮のDVについては他者がどうすることも出来ない問題ではありましたが、問題は現代パートの社会的なバッシングの悲劇にあります。
文、更紗の今のパートナーに対しては、本来はそれぞれの対応(対処)問題となりますが、“SNS”“マスディア”“警察”等々による問題については本人達の力ではどうにもならない。それに、社会が健全であれば、そもそもこういう悲劇は生まれない筈。
なので、こういう悲恋が成立する根本的な要因としては、社会としての民度の低さが一番大きな問題の様に思えますし、現実でもこうしたニュースが絶えないのだと思います。
しかし、“SNS”や“マスディア”の愚行・愚劣はどうにもならないにしても、警察など公的組織がそれを真に受けてしまうってどうなの?
本作の場合“ロリコン”という言葉が一人歩きしていたが、他にも“オタク”“セクハラ”“パワハラ”等々、バッシング対象の曖昧な言葉は山ほどあるけど、結局文はロリコンなのかどうかは別にして性犯罪は犯していないし、公的機関が“SNS”や“マスディア”と同等の判断基準しかないというのは大問題でしょう。
こうした物語やニュースを目にする度にネットやマスディアの信憑性や犯罪性についての判別する公的機関は必要であると思うし、所謂“ネットクズ”や“マスゴミ”と呼ばれているモノに対しての(間接)犯罪に対しての公的な対処機関も絶対に必要だと思いますけどね。
ホント、こういう作品は良い作品でもあるし、嫌な作品でもあるよな。

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シューテツ