劇場公開日 2022年5月13日

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「感心。感動。そして深い反省。」流浪の月 CBさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5感心。感動。そして深い反省。

2022年5月26日
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鑑賞方法:映画館

正直に言おう。不遜な話だが、最近の俺は広瀬さん(すず)の将来を少し危惧していた。(いや、実際に書くと顔が真っ赤になるな。思っていた以上に不遜なコメントだわ)
「海街ダイアリー」「怒り」「三度目の殺人」…いつでもどこでも広瀬さんは見事な演技をみせてくれた。妹でも少女でも娘でも、それはいずれの映画でもそれぞれキーとなる難しい役どころだったが、広瀬さんは映画の流れを停滞させないどころか明らかに増幅する素晴らしさに満ち溢れていた。一方、主演では、「ちはやふる」「チアダン」と、爽やかにエネルギーに溢れて周囲を変えていく主人公をこの上なく魅力的に演じてみせてきた。
広瀬さん、凄い。しかし、最近ふと感じた。広瀬さん、この後どこへ行くのだろう。少女を完璧に演じる広瀬さん。でもいずれその季節は過ぎ去る。というか過ぎ去ろうとしている。あまりに早くから輝き続けていた広瀬さんだから、考えたこともなかった「この後」…

そこへ本作! いやあ、見事なまでに、俺は阿保だ、なんも見えとらん、と思い知らされました。広瀬さん、やっぱ凄い、凄い、凄い!!!
「被害者」に位置付けられた彼女には、暖かくはあるが、自分の想いと正反対な言葉や視線が、かけられ続けてきたであろう。
そんな十数年を経た後の彼女。当時の原因となった辛い記憶に夜な夜なうなされ目を覚ます。その奥に壮絶な贖罪の気持ちを秘め、それでいて周囲とは(彼氏を含め)平静に達観しているかのように付き合い続ける。
抑えに抑えた表現。感情も必要最小限で。想いがほとばしるシーンですら、じっと耐えるかのように。

対となるのが、更紗と文が二人で足漕ぎボートに乗るシーン。この映画で唯一、広瀬さんがその明るい笑顔をふんだんにふりまくシーン。ここと全編との対比が鮮烈で、この映画の重さをまた際立たせる。これが本当の更紗なんだと、普段更紗が被らずにはいられない殻の厚さを、観ている俺たちに気づかせるシーン。上手い。

松坂さんもまた同じ。最小限のセリフ、最小限の動き。それは、この映画の全体をしっかり包むトーン。
実はものすごい怒りのエネルギー。それが、静かに静かに。噴火する前に地下でグツグツ音を立てているほどだが、まだ地表はひんやりとすらしている。そんな絵が、エンドロールを観ている俺の頭の中に描かれる。

こんな映画を成り立たせてくれた広瀬さん、松坂さん、俺、堪能しました。ありがとう!! そして、広瀬さん、冒頭のたわごとを心配してた愚かな俺を許してください。深く深く反省してます。

月。太陽ではなく、月。陽ではなく陰。陰ではあるが影(罪・病気)ではない、あくまで光(個性)の一つ。であるのに、世間はそれを「気持ち悪い」と許さない。それは文(松坂さんの役)の母親すらも。本人すら見る病気だと思い込んでいる。

精神的な意味まで含めて居場所がなかった、そして今でもない二人が、流れ流れてでも寄り添いあうことは素晴らしい。だが、彼らの居場所を奪うのは他でもない。この映画を観ている俺が、俺たちが、観終わった瞬間から戻ってしまう、常識という皮を被った偏見だ。本来の自分で考えようという努力をせず、世人の声に盲目的に従ってしまう俺なのだ。それをこんな静かに、それだけに深く深く抉ってくる原作者、李監督、凄い。その怒り、伝わりました。参りました。

そして、白鳥さん(玉季)。よかった。松坂さん、広瀬さん、白鳥さんの年齢差があってこそ成り立つこの映画。その奇跡にも乾杯、です。

追伸0
小松さん(菜奈)が中島監督に鍛え上げられたように、広瀬さん(すず)は李監督に鍛え上げられるんだね。全ての女優が、監督達に鍛え上げられたらいいのに、と日々無理な希望を感じる俺です。
追伸1
更紗にだけは知られたくなかった… 知ってほしかった。…俺、知ってる。それって、恋だよ。
追伸2
150分あったのか、気がつかなかった。
追伸3
横浜さん、多部さん(未華子)、柄本さんと周囲も見事でした。特に、多部さんをほぼ終盤の泣き顔だけのために使う贅沢さに、この映画に込められた想いを感じる。
追伸4
「大河への道」、「ハケンアニメ」と観て本作を観た。今週は凄い週だなと思いながら観たが、本作を観る前は昨日とは逆順だったかなと思っていたが杞憂だった。本作が四番バッターだった。それにしても凄い週だった。幸せだ。
追伸5
備忘録。日中の薄い月を水中から見上げた、あの日から…
文、見て。月。
更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない。
お尻、百叩きだな。
私、リョウくんが思ってるほど、可哀想な子じゃ、ないと思うよ。

原作、読み終わった。面白かった。というのは不謹慎な言葉だろうか。読めた。読まされた。
原作から
彼が本当に悪だったかどうかは、彼と彼女にしかわからない。(北極星)

最後に
病気だったのか。そこは、原作読むまでわからなかった。そういう病気があることも知らなかった。監督にとってもそこはどちらでもよかったのかも。この映画は、勝手な解釈、勝手な同情といったもので、周囲から孤立させられる人たちの立場に身を置いた、やはり怒りの映画だったのだと思う。

そう、事実は真実とは違う。「…誰も、なんも、知らないくせに」

CB
みかずきさんのコメント
2023年1月2日

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今年も、本作のような共感作での交流をお願いします。

ー以上ー

みかずき
kazzさんのコメント
2022年7月6日

広瀬すず讃歌、同感です❗

kazz
光陽さんのコメント
2022年6月15日

この作品、広瀬すずさん、松坂桃李さん、はじめ役者の皆さんの演技が見応えありましたね!
多部未華子さんの使い方、確かに贅沢ですね。わずかな出演シーンなのにすごく印象に残っています。

光陽
CBさんのコメント
2022年6月14日

うんうん

CB
アンディぴっとさんのコメント
2022年6月13日

CBさんコメントありがとうございます。
CBさんのレビューに同じく、私もこれからのすずちゃん、どうやっておとなの女優に進化するのか少々心配だったのですが、本当に要らぬ心配でした。
そして白鳥玉季ちゃん、広瀬すずにどことなく似ていて、ピッタリでしたね。

アンディぴっと
満塁本塁打さんのコメント
2022年6月1日

コメントありがとうございました。よろしかったらご覧ください😊😊😊。

満塁本塁打
みかずきさんのコメント
2022年5月31日

CBさん
みかずきです

コメントありがとうございます。

私は、作品世界に没入して鑑賞するタイプなので、
本作のようなシリアスな作品を観ると、暫く、余韻が残ります。
平常心に戻るまでに時間が掛かります。
覚悟と表現したのは、本作の作品世界に没入する覚悟のことです。

廣瀬すずは、私の地元出身なので応援していますが、
大女優への道を一歩一歩前進しているようです。

では、また共感作で。

みかずき
CBさんのコメント
2022年5月30日

あはは。そうなんですね。エドガー、アラン、ポーなんだ…

CB
kossyさんのコメント
2022年5月30日

CBさん、コメントありがとうございます。笑って頂けて嬉しく思います。
ポーの一族って、主役にエドガーとアランって子が出てるみたい!
自分で書いておきながら読みたくなってきました~

kossy
CBさんのコメント
2022年5月28日

今週のランキングでは4位だったようですが、これはまあ、万人ウケする映画じゃないだろうから、しょうがないですね…

CB
ダルメシアン07さんのコメント
2022年5月28日

確かに4番バッターですね。

ダルメシアン07
CBさんのコメント
2022年5月27日

白鳥さん、若き頃の広瀬さんみたい。美人って、こんなにいるんですね、という感動。

CB
だるまんさんのコメント
2022年5月27日

コメントありがとうございます。今週は当たり週ですね。「大河への道」はまだ見ていないですが楽しみです。
しかし李監督も凄いですね。「怒り」では広瀬すずがレイプさる役でした。
今作では、白鳥玉季がちょっと際どい役でした。今後の活躍に期待ですね。

だるまん