「ある意味結果オーライの物語。巡り会えて良かったね、と、表面は不幸で悲しい話の様でその実一緒に流れてくれる運命の人と繋がれたね、というお話。」流浪の月 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ある意味結果オーライの物語。巡り会えて良かったね、と、表面は不幸で悲しい話の様でその実一緒に流れてくれる運命の人と繋がれたね、というお話。
(原作未読)①亮くんは“たかがバイトだろ”という台詞を吐いた時点で「あっ、こいつダメ」と思った。下手くそなセックスシーンは必要なのか?と思ったが、亮という人間を描くには必要だったのかも(更紗がセックスに対して積極的になれないトラウマがあることの伏線にもなっていたことが後に分かる)。同棲相手が料理を作って待っているのは当たり前、って思ってるところや、更紗に暴行を加えるシーンとか「ホントに、ホントにダメなやつ」であるけれども、土地持ちの家に生まれた(自分には逃げ場所がある)反面母親は居ないようで(死んだか逃げたかはわからないけれど)その辺りが人格形成に影響しているのかも知れず、まあ弱い人間だということですね。更紗はこんなやつと結婚しないで良かった。②少女時代の更紗が家に帰ると従兄弟にイタズラされるので帰りたくないという気持ちは十分分かるけれども、公園で目の前に立つお兄ちゃんが同じことをするとは思わなかったのかしら。その辺り、ちょっと不自然さを感じるが結果として変なことしないお兄ちゃんで良かったね、です。肌感覚でこのお兄ちゃんはそういう人じゃない、と分かったのかな。同居するようになってホントに楽しそうだったし。確かにそういう波長の合う人に時たま巡り合うことは私もこれまでの人生で確かにあったし。③広瀬すずは前から上手い子だなとは思っていたけれど本作でも好演。特に亮と関係が上手く行かなくなってから対峙するときの目の演技が良い。更紗の少女時代を演じた女の子も上手。④松坂桃李は大学生には見えなかったが、“死んでも知られたくない”秘密を抱えて生きている男の影の様なものは良く表現していた、と思う。ここにも毒親の被害者が一人いた訳だが、子供のない私には自分の子供に“自分の異常を私のせいだと言うの?”とか“生育の悪い木を出来損ないだから捨てるのよ”(と文を見る目も言っていた)とか言う母親がいることが信じられない。そういう女を“母はとても正しい人だから”という文の心の折れ曲がり具合が痛ましい。母親役の女優さんは知らない人だが少ない出番ながら中々の存在感。⑤あと、帰りたくないという更紗を家に連れ帰ろうとした時はどういう気持ちだったのだろう。もう大学生だから自分のしていること(誘拐と見なされることは分かっていただろうし。)同じ子供の体だから繋がれると思ったのか、やはり少しはロリコンの気はあったのか。更紗の口からケチャップを拭い取って上げた後、唇を撫でるところはビミョー。⑥多部未華子は彼女でないとだめな役だったのか疑問。柄本明は、あの台詞“人も物も出逢って別れてまた出逢う”(だったかな?)を言う為だけのゲスト出演か?⑦観る前は、吉田修一の『さよなら渓谷』的な映画なのかな、と思ったがずっと分かりやすい映画であった。⑧ラスト、二人が共に流れていくことを確認し合うまでは、二人の心の中には様々な感情(葛藤・悩み・苦しみ・悲しみ・絶望・希望・自由・解放感等々)があったと思うが、静謐な映像はその心象風景をよく表していた、と思う。