ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。のレビュー・感想・評価
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近くて遠い国
北朝鮮にまつわる諸問題について語るには自分はあまりにも不勉強で知識が足りない。しかし、ニュースを含めいま出回っている情報が全て正しいのか、という疑念があるので、あまり知ろうとしていなかった。
そんな私にも十分理解できる朝鮮人の帰還事業問題についてのドキュメンタリー作品。この手の問題は当然人の数だけ物語があって、それぞれ異なる背景がある。なので簡単に善悪や正否という二極論で語れないし、まして自己責任論で片づけられる問題でないと思う。
身近で起きている問題ではないので、イマイチ感情移入しにくいし、ドキュメンタリーにはありがちな特定の一人の視点に偏り過ぎているので、作品として評価すると並みのドキュメンタリー作品という感想ですが、なかなか斬り込みにくい問題を扱い、国に対しても問題提起となっているので、今後とも継続して取材して、続編が出来れば見てみたいと思います。
切ない
熊本県で平穏な毎日を過ごしている67歳の林恵子には家族や親しい友人にも語らなかった事があった。それは1960年に20歳歳の離れた実の姉・愛子が在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡り、北朝鮮で暮らしているということだった。渡航した愛子は山のように手紙を送ってきたが、そこに書かれていたのは金や物品送付の催促ばかりだった。賢くて美しく憧れの存在だった姉の変わりように落胆した恵子は姉と絶縁した。日朝関係は悪化し、愛子が北朝鮮へ行ってから一度も会わず58年の歳月が流れていった。ある時、姉の消息を知らされた恵子に姉への思いが湧いてきた。これまで海外旅行もしたことのない恵子だったが、子どもたちの反対を押し切り、北朝鮮へ姉に会いに行く、という話。
ジェンダー映画祭でライターの武田砂鉄さん推薦作品。
自分の意思で北朝鮮へ行った日本人だから家族に会えないのは自業自得、拉致被害者とは違うと言う意見もあるが、北朝鮮が今のような国に成るとは当時は思ってもいなかっただろう。3年行ったら日本に帰ってくると言って日本政府も支援した帰国事業だったのだから、気の毒なのは間違いない。
金送れ、物送れ、と言う手紙も本人の意思なのか政府の指示なのか解らない面もあると思う。
恵子さんはお姉さんに会えて嬉しかったから、お姉さんの友達の日本人妻達のために日本で親族を探す活動をしたが上手くいかなかったり、会いたがらなかったのも残念だが理解できる。
個人的には誰も悪くない、なんとも切ないドキュメンタリーだった。
とてもよかった
北朝鮮帰国事業で北朝鮮に戻った人たちは、実は北朝鮮出身の人がたった1%のみで他は南朝鮮の出身者だったことに驚く。帰国でもなんでもない。北に渡った日本人妻たちが数多くおり、なんでまた日本よりも寒くて言葉も通じないところに行くのだ、せめて南にしたらいいのにと思っていたのだが、当時は韓国の評判が軍事政権で著しく悪かった。なかなか行ったり来たりできない場所であるいとは言え、生活を移すなら下見をしてからにしてほしい。ブラジルやアメリカに移民した人たちもいて同じような感覚だったのだろうか。
お姉さんが足は弱っているものの明るくポジティブな人で孫に囲まれて映像で見る限りは幸せそうだ。妹の恵子さんの39歳の息子が独身で逆に心配されている。日本で貧困で自由で生涯独身なのと、不自由だけど家族を持つ生活が対照的だ。
政治の問題なら政治家がなんとかしなければならない。小泉純一郎以来誰一人北朝鮮に行った総理大臣がいない。安倍晋三がなんとかしてくれると期待していただのけどとうとう何もしなかった。特に元首が変わるタイミングはチャンスだったはずだ。野党は権限がないから行っても仕方がないのだろうか。総理大臣か外務大臣、参議院でも県議でも、維新の会でも共産党でもれいわ新選組でも誰でもいいからちょっと北朝鮮に行ってきて欲しい。不祥事で名誉を挽回したい人は特に行けばいいと思う。
ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。
国境も歴史も超える家族への愛情
かつて日朝政府が推進した帰国事業と、その後の両国の断絶の歴史によって親兄弟と生き別れた普通の人々。
「地上の楽園」「3年で帰れる」といった嘘に翻弄されながらも、未知の地で家族を持ち、そこで生きることを受け入れた人間の喪失感と覚悟とは如何ばかりだったろう。
一方でその苦悩を知る術もなく、やがて疎遠になり忘れ去ることしか出来なかった家族の想いも理解できる。
歳の離れた姉妹の奇跡ともいえる再会。
二人は声を上げて号泣し抱き合いながらも、顔は皺だらけで脚も不自由な姉は、妹のふくよかな身体や欠けた歯のことを心配して、カメラも気にせず飾り気も遠慮もない言葉をかける。
それは58年の時を経て、国境を隔てても、二人が他人ではなく、ずっと血の繋がった姉妹であることの証ともいえる愛情だった。
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