「昭和に観たスリラーや怪奇漫画のようなノスタルジックなグロテスクを経て辿り着く思わず爆笑するくらい仰天のオチ、韓流サイコホラー恐るべし!」整形水 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和に観たスリラーや怪奇漫画のようなノスタルジックなグロテスクを経て辿り着く思わず爆笑するくらい仰天のオチ、韓流サイコホラー恐るべし!
美人タレントミリのメイクを担当しているイェジは幼少期に打ち込んでいたバレエで挫折し自身の外見にコンプレックスを持っていた。自意識過剰で陰険なミリからブタ女と罵られる毎日に加えて、エキストラが足りないからと出演を懇願された番組の動画がSNSで激しいバッシングを浴び、自室から出られなくなってしまう。そんな凄惨な芸能界で囁かれているのは思い通りの容姿を手に入れることができるという“整形水”の存在。とあるきっかけで“整形水”を手に入れたイェジは使用法に従い4倍に薄めた整形水に20分顔を浸してみると見違えるように美しい顔に変貌していた。顔だけでなく全身を理想の姿にしたいイェジは両親から巻き上げた2億ウォンを手に“整形水“サロンを訪れるが、イェジの与り知らぬところで不審な事件が多発していた。
美しいことが全ての世界で虐げられたイェジがソレと名乗り手に入れた美貌でのし上がる序盤の展開に、昔日曜洋画劇場で観た『二つの顔を持つ女/整形美女の復讐』を連想しましたが、ちょっとしたミスで窮地に陥ったソレがある一線を越えてからは我々世代が慣れ親しんだ日野日出志や楳図かずおの怪奇漫画、『超人バロム・1』、『妖怪人間ベム』といった人間の醜さをグロテスクに抉ってみせた20世紀の和製ホラーのおどろおどろしさが弾け、終盤は後ろに座っていた高校生男子がブッ!と吹き出すのが盛大に劇場に響くくらいのぶっ飛んだ展開・・・これは日本人の感覚では思いつかないやつです。しかし、そんな情け容赦ない物語の背景にあるのはしっとりとした家族愛であり、ただ驚かせて終わりではなく嫌な後味を噛み締めながら観客を帰路につかせる凶悪なもの。韓流サイコホラー恐るべしです。