整形水

劇場公開日:

整形水

解説

韓国発のオムニバスコミック「奇々怪々」の1編「整形水」をアニメーション映画化し、美しくなりたいという人間の果てなき欲望と狂気を描いたサイコホラー。人気タレントのメイクを担当しているイェジは、幼少時から自分の外見に強いコンプレックスを抱えていた。タレントからは罵倒され、偶然から出演したテレビ番組では悪意ある書き込みをされ、自暴自棄に陥ってしまう。そんなイェジのもとに、巷で噂になっている「整形水」が届く。それは、顔を浸すだけで思い通りの容姿に変わることができ、後遺症も副作用もない奇跡の水だという。美しくなって新しい人生を歩むべく整形水を試すイェジだったが、しばらくすると周囲で不審な出来事が起こるようになり……。

2020年製作/85分/PG12/韓国
原題:Beauty Water
配給:トムス・エンタテインメント、エスピーオー

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(C)2020 SS Animent Inc. & Studio Animal &SBA. All rights reserved.

映画レビュー

4.0変身ものアニメの系譜

2021年10月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

外見を変える整形というテーマを、アニメーションでやるのは理にかなっている。外見の変化の可能性=可塑性は、まさしくアニメーションの特徴として挙げられるものだからだ。しかし、日本のアニメはあまり整形というテーマを扱ってこなかった。もっと広く「変身」ということで考えると、魔法少女ものに代表されるように数多く作ってきた。これもある種の変身ものである。
漫画では岡崎京子「ヘルタースケルター」や、(整形ではなくダイエットだが)安野モヨコの『脂肪という名の服を着て』など、本作と類似する作品をいくつか挙げられるように思う。
整形も変身の一種だ。まるで魔法のように一夜で外見を変えてくれる整形水。外見が変われば人生が変わり、望んだ人生が生きられる。変身願望とは、突き詰めれば、今の自分に不満があるということだろう。今の自分が冴えないから、フィクションでその変身願望を満たす。
変身願望は多くの人が持っている。社会がルッキズムを克服したとしても、その願望が消えることはないだろう。この映画は人間の尽きぬ願望に根差した部分に触れているから、心底怖い。

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杉本穂高

4.5「PERFECT BLUE」を連想させる良い意味で意地悪なテイスト、吹替え版は原音にピッタリ

2021年9月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画評(作品トップ→評論から読むことができます)執筆時は字幕版を見せてもらっていたので、吹替え版を劇場で見ました。主人公イェジ/ソレ役の沢城みゆき氏ら吹替え版キャストの演技は原音の感じともピッタリで、日本のアニメファンにとってはよりアニメ度が増す効果もあって大満足でした。声優にくわしい人が最後まで見ると、納得のキャスティングであることがより分かると思います。
今敏監督の「PERFECT BLUE」を連想したと書かれている感想をいくつか目にして、私自身も初見のときに似ているところがあるなと感じました。芸能の世界が舞台、「見る・見られる」の関係が執拗に映され主人公の自我が崩壊していく描写、通販番組のテレビ画面などの作りこみ、オチを含め全体に良い意味で意地悪なテイストが満載なところなど……。人間の暗部をグサグサえぐるように描き、それが楽しさに変わっていく秀逸な作品で、個人的にかなり好きな1作になりました。

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五所光太郎(アニメハック編集部)

2.5いかにも韓国っぽい題材だ。 切り口はおもしろいが、予想以上にグロテ...

2023年6月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

いかにも韓国っぽい題材だ。
切り口はおもしろいが、予想以上にグロテスクな内容で気味が悪かった。
主人公の女性は見た目は不細工だが、性格は良いのかと思いきや、性格もかなり歪んでおり、全く応援できない。

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省二

3.0こびりついた病理

2023年3月16日
iPhoneアプリから投稿

話の展開にも表現技法にもそれほど目新しい点はなく、求心力の一つとして時折挿入されるショッキング描写も、3DCGののっぺりとしたテクスチャではいまいち痛々しさが伝わってこない。ノイタミナのイマイチ枠、程度の気持ちで気軽に観るのがいい。

ただ、作品の主眼でもあるルッキズムに関わる箇所に関しては割と細やかに注意が払われていたように思う。たとえば傲慢で他責的で自己中心的な主人公。しかし彼女の因業な性格の根源にはルッキズムという「個々人の価値観」の域をゆうに超越した社会病理が座している。本作はそこを否定しない。主人公の子供時代の挿話や周囲の男の反応などを交えながら、美への執着が個人のみならず社会の問題であることをしきりに強調する。

また主人公を清々しいくらい醜悪に描き切る、すなわち彼女を絶対に「反省」させない点も良い。むしろ彼女の過剰なまでの暴力性を通じて、本作はルッキズムなるものがいかに強固なものであるかをある種戯画的に語り出してみせる。もしここで主人公が「反省」でもして粛々と社会生活を送るとか元の醜い顔を受け入れるとかいったオチに収斂していたとしたらそれこそ欺瞞だ。あと下手に「性格のいいブス」みたいな相対化要因が出てこないのも素晴らしい。「性格のいいブス」など存在しないと言っているわけではない。そんなものを持ち出したところでルッキズムの問題はどうにもならないと言っているだけだ。

暴力と暴走の果てに主人公が辿り着く結末が単なる破滅や死などではない点も評価できる。彼女は彼女以上にルッキズムに囚われた人間の狂気によって文字通り「吸収」されてしまうわけだが、この際限のなさ、そして空虚さこそがルッキズムの本質であるといえるだろう。

ただまあこのくらいの思慮深さを湛えた作品で、なおかつ品質の高い作品などは世の中にごまんと存在するだろうから、敢えて本作を見る意味は薄いんじゃないかと思った。

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因果