「リアルさ十分・エンタメさ不足」オールド maruさんの映画レビュー(感想・評価)
リアルさ十分・エンタメさ不足
このビーチでは人の一生が1日で終わる…という触れ込みから、鑑賞前からSFの匂いを感じました。観てみれば、そのビーチは特別な岩?鉱石?で囲まれていて「時間の流れ」が滞留するかしていて、「時間」が人間の細胞に作用して、老化を促していた。
そのビーチを使ってでっかい製薬会社が「長期治験を1日で行う」という目的で、人体実験を行い、新薬の開発をじゃんじゃん行っていた。治験後の人間は白骨化し塵となるので死体処理にも手がかからない。やりたい放題。
オチも筋が通っていてよかったですが、オチに行く前までに人間の一生を辛辣にまざまざと描く必要があったのかとも思う。それが美しいのだろうけれど、リアルすぎる描写は観てられない。ドキュメンタリーなどのジャンルではない以上、映画は基本エンターテイメントなので、現実逃避や非現実を楽しむために観るので、最後全員生き返るくらいのSFでもよかった。
シックス・センスのようにキャラクターを立てたり、ヴィレッジのように世界観にこだわったりではなく、現実に近い物語を描いているので「治験」という人間が人間に対する行為はリアルすぎてエンタメ性が薄い気がする。
①人の一生のドキュメンタリー(現実・リアル)と②巨大企業の治験(現実・リアル)を③ビーチ(非現実・エンタメ)が繋いでいるので、3つの要素でできていて、2:1で現実味が多い。
両親が老いて子供がその死に様を見届けるシーンは、監督の伝えたい部分のような気もするが、辛すぎて観てられない。死を描くことで生が際立つことはありますが、ヘリに乗るまで死しか際立っていない。映画の9割以上が死ぬことについて描かれていて、ブラインドネスほどではないが、暗い気持ちになる映画。ただ、監督が描きたいことや伝えたいメッセージについて「誠実」な雰囲気を感じられました。しかしながら、ドキュメンタリーのジャンルではないならエンタメ性は欠かせないかもしれない。