「伏線とは……」オールド ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
伏線とは……
老いと死は、必ず起こると断言出来る数少ない事象だ。誰しも、普段その恐怖を身に迫って感じる機会は少ないが、心の隅でそれが我が身に訪れることを恐れている。
本作では、その現象が想定外のスピードで登場人物を襲う。結果に当たる部分が実際誰にでも例外なく起こるものであるせいか、恐怖との距離感が近い。
こういった題材自体は面白いなと思って割と期待して見に行ったが、序盤から「これが伏線ですよ」という描写が多過ぎて、私のテンションはすーっと下がっていった。
宣伝で得た老化が早まるビーチという予備知識。そして製薬会社が経営するホテル、意味深なウェルカムドリンク、この時点で黒幕は製薬会社だと分かってしまった。子供たちが宿泊客に名前と職業を聞いて回り、それを記録する遊びをしている。そんな遊びする子いるのだろうか。警官もいたし、これもビーチからの生還後の伏線と察する。
ホテルの子イドリブがトレントに渡す暗号の手紙。あーこれも後で役に立つのでしょう(結局開封されるのはビーチの客がほぼ全滅した後だが)。
例のビーチに行くバンの運転手はシャマラン監督。本編前の挨拶VTRで顔を思い出していたので嫌でも分かる。結構映ってる時間が長い。ここからトワイライトゾーンなんですね。メタ的過ぎて真顔になった。
提示された時点ではストーリーに自然に馴染んで気付かない程度にほのめかされるものを伏線というのだと思いこんでいたので、頭隠してお尻丸出しのような伏線たちにすっかり気が削がれてしまった。
力技のような展開も気になった。
一番何かの役に立ちそうな医師のチャールズは、プリスカの腫瘍を摘出した後は(傷がすぐ治るとはいえ麻酔もなくて痛くないのだろうか)持病により刃物を振り回すだけの危険人物に変わってしまい(何度も暴れるが、終盤の展開のために刃物の管理は甘いまま)、助けたプリスカに退治される(恩人だけど躊躇なし)。
序盤で波間から死体が流れてきたりしているのに、看護師のジャリンは性懲りもなく泳いでいって案の定死んでしまう。
ビーチだけ時間の流れが早いのではなく、周囲の岩の影響で老化が進むようだが、中身が6歳のままのはずのトレントが、レントゲンの防護服の知識から脱出方法の着想を得たりする。うーんそりゃ、あり得なくはないけど。
ホラーに理屈っぽいツッコみは野暮の骨頂。とはいえ程度問題で、気になる部分があまり多すぎるとやはりがっかりしてしまう。大作だが、伏線の置き方のチープさが目についた。