「生老病死てんこ盛りの、正に人生RTA。こういう時は氷で冷やすんだ!」オールド たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
生老病死てんこ盛りの、正に人生RTA。こういう時は氷で冷やすんだ!
一日で一生分の時間が経過してしまうビーチに閉じ込められた人々を襲う恐怖の体験が描かれたサスペンス・スリラー。
監督/製作/脚本は『シックス・センス』『アンブレイカブル』シリーズのM・ナイト・シャマラン。
主人公一家の家長、ガイ・カッパを演じるのは『バベル』『リメンバー・ミー』のガエル・ガルシア・ベルナル。
カッパ夫妻の娘、マドックスの成長後の姿を演じるのは『キング』『ジョジョ・ラビット』のトーマシン・マッケンジー。
「スタンド攻撃ッ!新手のスタンド使いだぞジョジョーッ!」という一本。プロシュートの兄貴が居たのかな?
こういう時は氷で身体を冷やすとベネ(良し)ッ!
シャマラン映画は『ヴィレッジ』以来、17年ぶりに鑑賞。
あの時はまだ中学生。
『シックス・センス』面白すぎっ!『アンブレイカブル』もめっちゃオモロい!『サイン』もなんか変な話だけど面白い!
…からの『ヴィレッジ』。
…うん、なんか面白い…のかなぁ、これ?でもまぁシャマランがつまらない映画を作るわけないしなぁ。…でもこれ面白いのかなぁ?
という、自分のキャパシティを超えるなんか訳分からん
映画を観たという初めての体験だった気がする。
友人達と観に行ったと思うのだが、その後どんな会話をしたのか一切覚えていない。お通夜みたいなテンションになったからかも。
同級生が彼女とデートに来ていたのと鉢合わせて、なんか気まずい感じになったけど、こんな映画を観た後で、一体彼女とどんな会話をしたのだろうか…。
正確にはこの後『レディ・イン・ザ・ウォーター』もお家で鑑賞したと思うのだが、本当に一切記憶に残っていない。
まぁこの辺でシャマランには見切りをつけてしまい、その後の『ハプニング』からは未鑑賞。大体シャマランの世評が悪くなっていた時期と重なりますね。
長々と思い出話を書いて、つまり何が言いたいのというと、一時期のシャマランは普段あんまり映画を観ないような田舎の中学生が、連れ立って映画館に押しかけるような、超ドメジャーな存在だったということ。
『レディ・イン・ザ・ウォーター』のラジー賞受賞を皮切りに、どんどん落ち目になっていったシャマラン。
しかしこの5年くらいで一気にその名声を取り戻していった感がある。
今回の『オールド』もお客さんが多かった!
シャマラン直撃世代としてはこれは非常に嬉しい😊
15年ほどのブランクがあるため、他のシャマラン映画と比較してどうこうと語ることは出来ないが、本作は中学生くらいの時に熱狂していたあのシャマラン節が炸裂した、正にシャマランファンの為の映画だという感じがした!
『世にも奇妙な物語』のような、アイデア一発勝負の歯切れの良さ。
怖がらせたいのか笑わせたいのか分からない、シリアスな笑いを突き詰めたかのような演出。
細けぇことはいいんだよ!という、正に『ジョジョ』を思い起こさせるおおらかな脚本。
そしてこれからホラー映画が始まるというのに、「皆さんこんにちは!シャマランです!映画館で映画が観れるって良いよね!」という、監督自ら出演する牧歌的な挨拶動画をお届けしてくれるという陽キャ全開なサービス精神。
どこからどう見てもザ・シャマラン!うーん、満足🤤
ライターの高橋ヨシキさんの指摘。
「人の一生を2時間に集約するのが映画。2時間のうちに1人の人間が生まれ、そして死ぬというのはどんな映画でもやっている。それをシャマランが撮ったらこうなった。この映画に○○年後という字幕が入れば凄く普通の出来事だよ。」
これは非常に的確な読み解きであり、この映画の全てな気がする。
人が生き、そして老い、やがては死に至るという自然の営みを、遠景から撮影している男。
その男を演じているのがシャマラン監督自身だというのが興味深い。
「生老病死」という人間の運命は、実は非常に奇妙なものであり、またとてもホラー的な要素を孕んでいるのだ、というシャマラン監督のイデオロギーのようなものが描かれた一作であり、正にシャマランの集大成のような作品なのではないか。
そう、本作は人の一生こそが最大のエンターテイメントであり、奇妙な驚きに満ちているということを教えてくれる、シャマラン流『ベンジャミン・バトン』なのだー!
怖かったし笑ったしツッコんだしで、とても楽しめる作品だった。
一番感心したのは死に方のバリュエーション。老衰、溺死、転落死、死産、刺殺、病死、中毒死…。あの状況で考えられるありとあらゆる死に方を見せてくれた。
これはただのサービスではなく、人の一生を描くという本作のテーマに通底しているような気がする。生まれてくる方法はどんな人間でも同じだが、死ぬ方法は人によって千差万別なのだ。
あとは自殺があれば完璧だったと思うのだが…。
とはいえ、ウェルメイドなホラー映画かといわれると…。
やっぱり説明過多なのが問題なんだと思う。
いちいちこの現象の原因はどうだの、実は製薬会社の陰謀だっただのと、この不可思議な現象に理由をつけすぎ。
どうせどんな説明をされても納得なんか出来ないんだから、もっとゴリ押ししてしまえば良かった。爪や髪は死んだ細胞だから伸びない…?🤔
あとはもっとこの状況から脱出する為の策を見せて欲しかった。
カッパ一家がこの状況を受け入れるというのは、まぁ本作のテーマからすれば納得の展開なのだが、個人的な好みで言えばもっと悪あがきを見せてほしかった。
思いもよらない脱出方法で、あっと驚かせて欲しかったけど、それは求めすぎかな?
このご時世、こんなに水着のお姉さんたちを観ることが出来る映画も珍しいかも。やっぱりホラー・スリラーには水着美女がつきものですよ!