劇場公開日 2021年8月27日

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「無理な設定を通すのがシャマラン流。」オールド ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5無理な設定を通すのがシャマラン流。

2021年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日常ではありえない極限状況に陥った人々を描いているという意味では、この映画はパニックものであり、ホラーものと言える。そういう場合に、やたらと敵対や絆みたいなものを描きがちだし、見る側も求めてしまう所がある。しかしシャマラン流は、そんなヒューマンドラマには興味がないとばかりに、この異常な状況を科学者のように冷静に描写してみせた。こどもは成長しておとなに、おとなは老化して死ぬ。成長は少し面白おかしく、老化は少し悲しく酷く描く。皆があまりに淡々としているように見えるので、もっと恐怖や絶望みたいなものがあるのではないかと思うのだが、実際はどんな異常な事も慣れたり、受け入れるものなのかもしれない。見る側も人が次々に死んでいくのを深刻には受け止めなくなっていく。これで全員死んでしまえば、原作通り、人生は海岸の「砂の城」のように一瞬で消え去るものだという虚しさだけが残るが、そこはシャマラン流である。最後の展開でひねりをきかせて、現実世界に引き戻してくれる。あの悪夢のような一日は何だったのか、何が残ったのかと考えさせる。

ガバチョ