「禅問答」オールド U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
禅問答
珍しくスッキリとした終わり方に思う。
訳も分からず放り込まれる理不尽な環境。
そのビーチでは「30分=1年」らしい。
その解説があるにはあって…一応、観客に対し理解を求める努力はしてくれる。
たぶん、あった方が映画的には楽しめると思う。
冒頭からもちょいちょい伏線は張ってあって、ラストに至り、一応納得もできるかと思う。
恐るべき速度でやってくる老化。
1日で寿命が尽きる。
ゾッとするのは、その精神構造だ。
死期が近づき穏やかになるのは、終わりが分かるから。これ以上何をどうしたところで、何が変わっても変わらなくても全てが終わる。
この先がない。だから「どうでもいい」
達観?諦め?悟り?なんなの?俺もたぶんその内、その境地に立つ事にはなるのかもしれない。
この台詞が1番堪えた…。
子供達に看取られ死んでいく。ある意味、幸福な終焉だとは思うけど、それを24時間もない時間の中で呑み込んでしまう2人。
幸せなのに、不幸せ…不幸せなのに幸せ。
やるなシャマラン。
この不条理な感情をどう消化すればいいのやら。
はたと気づく…「良かったね」と思っている俺がいる。という事は、この状況を受け入れているって事だ。
…俺はとても諦めの良い人間なのかもしれない。
ショッキングな事は目一杯起こる。
老化や成長がもたらす変化。妊娠って…6歳だろ?よくやり方知ってたな。身体の性徴に精神が沿っていくのは分からなくもないが…いや、もう、本能って事にしとこう。赤ちゃんの骨粉を撒くって、ホントに悍ましいシュチュエーションだよ。頭がどうにかなりそうだ。
暴力性が増していく医者も怖かったなあ…。
行為もそうだけど、その精神が恐ろしいは。無自覚だもんな。むしろ正しいとさえ思ってるんだろうな。
その治療としては、時間をかけて解きほぐすって事なのだろうけど、その時間が無いんだもんな。
アイツはなぜ終始、鼻血が止まらなかったのだろうか?切り口など秒で塞がるのに。
メンテナンスが必要な身体の代償も、これまた悍ましい。人であって人ではない。
あの女性は整形モンスターなのだろうなぁ。
彼女の変遷を明確にしちゃうと、鑑賞後の印象がソレに偏ってしまうから、あんま見せなかったのかなぁ。
あまりグロテスクな描写はないからショッキングな映画ではないのだけれど、後引くわー。
で、更にはそんなビーチさえ利用する人間の業の深さよ…。治験に利用する製薬会社ってのが、コレまた。断罪しきれない。
本人の同意を得ないからダメなのだけど、やってる事は同じだもんな。投与して観察して改良して、投与して。崇高な犠牲者は大量に生み出されているのだろう。
僕たちはその恩恵にあやかってるわけだ。
この不条理な感情よ…どうしてくれんだ?
ほいで「観測者」が監督なわけだろ?
…絶妙な立ち位置だよなぁ。
冒頭に監督のコメントが流れてて「おかえりなさい」って言われたのが、コレまたひっかかる。
怖かったかと問われれば「怖くはない映画」なのだけれど…じゃあ、怖くなかったのかと問われれば「…。」言葉を失ってしまう。映画的な怖さは皆無なのだけど、映画的な怖さ以外の怖さに埋め尽くされてたような映画だった。
謎解きに際し「?」と思う事もあるにはあるけど、まぁ、突っ込んだところで本質には影響ないように思う。