劇場公開日 2021年9月24日

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「“Stay Hungry , Stay Foolish , Stay Punk”」ディナー・イン・アメリカ 高橋直樹さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0“Stay Hungry , Stay Foolish , Stay Punk”

2021年8月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

“Stay Hungry , Stay Foolish” ---これは2005年にスティーヴ・ジョブスが若者に贈ったエールだ。
それから約15年、90年代のパンクに触発されて、地下室で音楽を作っていたアダム・レーマイヤー監督の『デイナー・イン・アメリカ』には、ジョブスの名言に連なるシンプルで熱烈なメッセージが込められている。
人は外見で判断してはいけない。映画に登場する人物も尚更だ。星条旗柄のワンピースで食卓を囲むパティは『ウェインズ・ワールド』女の子版みたいな眼鏡ルック。カーキのMA-1が似合うサイモンはモヒカン崩れのスリックバックで煙草を手放せない。一見とっつきにくいふたりだけど、観終わった時には得も言われぬ共感に包まれる。
ペットショップで地味に働くパティは、バスでは高校生にからかわれ、同性からも見下されている。唯一の楽しみは覆面ヴォーカリスト、ジョン Q率いるパンクバンド“サイオプス”を聴くこと。ライヴに行きたいが過保護な親から“Stay Home”と反対されている。一方、無軌道な行動で放火犯として追われるサイモンはまさに“Stay Foolish”を地で行く男。
ある日、パティは警察に追われるサイモンを匿うことに。ほどなく彼女が自分の大ファンだと知ったサイモンは、“Stay Hungry”な彼女の型破りスピリットを見出していく。そして…
パティを演じるエミリー・スケッグスは歌って踊れる舞台出身女優。カイル・ガルナーはアダム・レーマイヤー監督が憑依したかのように曲を生み出すサイモンを体現する。
ステイせざるを得ない状況下であってもパンクは貫ける。“Stay Punk”、ふたりが奏でる規格外ラブストーリーは“留まるな”と叫び続ける。

高橋直樹