劇場公開日 2022年4月1日

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「一般的概念は捨て去れ!人間と車の変態恋愛映画!!」TITANE チタン バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一般的概念は捨て去れ!人間と車の変態恋愛映画!!

2022年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

幼い頃に、交通事故でチタンプレートを埋め込まれたアレクシアだが、悲惨すぎる事故にも思えるかもしれないが、彼女にとって喜びでもあった。それは車と同じチタンを体内に感じることができるからだ。ここから彼女の偏愛は始まった……というか、もともとそうだったのかもしれない。

人間が車を愛しているということ、物欲的としてではなく、恋愛対象として。それが理解できるかできないかで、今作の感じ方は違ってくる。冒頭でアレクシアの偏愛に気づかないと、今作の中で、いったい何が展開されているか理解できないだろう。

去年、日本でも公開された『恋する遊園地』という作品も実は、同じようなテーマが描かれていた。『恋する遊園地』の場合は、アトラクションに恋をしてしまうというもので、これは実際にエッフェル塔に恋をした女性の実話が元となっていることもあって、かなり極端とはいえるが、一定数、恋愛対象として「物」を選択する人がいるということだ。

しかし今作は、それが明確に提示されない。『恋する遊園地』を観ていたから、すんなり理解できたものの、私たちの想像を超えた感覚には違いない。

私たちは、当然のように相手が人間であったり、少し変則的であれば、アンドロイドや宇宙人、モンスターという、どこか人間に近い存在や人間を象ったものにしか、愛情を注ぐことができないと思い込んでいる。

ところが恋愛対象が意思疎通のできない「物」だったとしても、私たちの想像の範囲内では異質でも、感情の芽生えとしては、何等かのきっかけであれば、あり得てしまうのかもしれない。

アレクシアは、とにかく車に対して愛を感じている。車とひとつになりたい、車と交わりたい……人間を相手に試してみるものの、男で試しても、女で試しても満足できない。 そのイラだちが彼女を殺人に走らせてしまう。

この変態的な感情を理解できていないと、アレクシアの発作的な殺人衝動の理由がわからないだろう。

そしてお腹には、車との間にできた子供が宿っている。それが本当に子供なのか、もしくは悪魔的なものなのか、わからないが、あきらかに命が宿っている。

ここが現実と空想の中間的な世界観であって、この世界では、人間と車の性行為が可能で、それによって子供ができる可能性があるのかもしれない。

これも私たちの生きている世界の概念で考えてしまうから理解できないだけで、映画という非現実的な世界を創造するものの中で展開される物語が、私たちの概念の延長線上にあるとも限らない。

殺人を繰り返していたアレクシスは、逃亡者となり、行方不明者のふりをして消防士のヴィンセントの元に転がりこむが、今まで車にしか抱いていなかった愛情がヴィンセントにも芽生えていく。

またこのヴィンセントも、なかなかの変態で何を考えているかが、全くわからない狂気性を秘めている。

それが恋愛なのか、家族として愛なのか、互いの変態的狂気性が惹かれ合うのか…….一般的概念は捨て去って、いかにこの狂気に満ちた世界観とアレクシスの愛を感じるかが今作を楽しむ鍵だといえるだろう。

バフィー吉川(Buffys Movie)