劇場公開日 2022年7月1日

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「私が最悪」わたしは最悪。 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0私が最悪

2023年1月24日
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鑑賞方法:DVD/BD

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昨年のアカデミー賞で『ドライブ・マイ・カー』と国際長編映画賞を競ったノルウェー映画。
主演のレナーテ・レインスヴェがカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞、その他多くの映画賞や映画祭で絶賛。共感も必至と評判も上々で期待していたのだけれど…、
う~ん…、自分には合わなかったかな。

描かれている事は普遍的。全世界や個人個人にも通じる。
30歳を迎えたヒロイン。人生の目的が定められずにいる。
自分の人生はこれだ!…とスパッと決められる人なんてそうそう居ない筈。仕事を転々としたり、思い悩んだり、一応今の仕事や人生を歩んでいるけど、これじゃないと感じたり…。
誰にだってある。私もそうでした。それに、時折今も思っている。
ならばこのヒロインには共感必至…とはならず。何処にでもいる平凡なヒロインに見えて、なかなかクセあって、その考えや身の振り方に共感出来るか否か。

実は割りと才能に溢れているヒロイン。並大抵の事はそれなりに出来る。
故にあれもしたい、これもしたい…。当初は医学の道に進もうとするも、心理学に興味持ったり、かと思えば写真家になりたいと大学を辞めて本屋で働く。
かなりのあっちにふらふら、こっちにふらふら。
人生設計もそうなのだから、恋愛に関しても。
年上のコミック作家と付き合う。描いている作品は時々物議を呼ぶ風刺的なコメディが多いが、性格は穏やかで優しい。おそらく、仕事も含め一緒になったら安泰。実際、彼は結婚を意識している。
だけど…。今一歩、踏ん切りや決心がつかない。
そんな時とあるパーティーで、年下の魅力的な青年と出会う。
お互い急速に惹かれ合う。
年上の安定した男性か、年下の魅力的な青年か。
彼女が選んだのは…、後者。
人の色恋に良い悪いは無いし、本人が選んだ事だけど、この時ばかりはしっかりとした理性より、女性としての本能や欲が出た気がする。
絡みは激しい。こっちも求めたり、あっちも求めたり。
それで幸せを見出だしたのならいいんだけど、喧嘩もするし、何処か元カレとは違うズルズルとした関係な感じだし、いつもながらの考え。
これでいいの…?

このヒロインの言動で、本作に共感出来るか否かのポイント。
揺れに揺れ動く心情は誰の身にも置き換えられつつ、つまりそれは優柔不断。見てて結構イライラもする。
恋に仕事に人生に、迷いに迷っているが、実は結構自己チューな気もしない訳も…。
“わたしは最悪”なんて自虐的なタイトルだが、行き当たりばったりのゴーイング・マイウェイ。
そもそもこのヒロイン像に共感を求めていないかもしれない。
共感というより、突き刺さるか、否か。
突き刺さる人には突き刺さるだろう。特に女性で、同年代、似たような経験があれば。
普遍的な人生右往左往物語として作り、誰にも思い当たる設定や要素を込めているも、なかなかどうして突き刺さらない。響かない。あくまで個人的見解として。
性別や国、これまで歩んできた人生などから来るのもあるかもしれないし、単にヒロイン像や話の展開が好みじゃなかったのかもしれない。

作品的には優れていると思う。
巧みな章仕立て。
描写はリアル。
レナーテ・レインスヴェは魅力的。好演。
“陽”なロマコメの雰囲気から、“陰”をも感じさせる切なさ、悲しさ。
ヒロインの喜怒哀楽、苦悩、成長、進む道…。
秀作ドラマ。

人は時に悲観的になる。“最悪”と思う事もしばしば。
しかしそこから、自分の“最高”を見つけ出す。
あまり好みの作品じゃなかったかもしれないが、作品自体は最悪じゃない。
まだまだ人生経験が乏しい私が最悪。
ある意味、自分の無能っぷりを思い知らされる衝撃作だったのかも…??

近大