「「バトル・ロワイアル」」ノイズ つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
「バトル・ロワイアル」
生まれ故郷に対する想いというのは誰しもが持つ普通の感情だろう。とはいっても、生まれた地から地続きで広がっている場所ではそれほど想いは強くならない。例えば埼玉で生まれ東京で過ごしていたりすれば埼玉も東京も一つのまとまりに感じるからだ。
では島の場合はどうだろう。島の中にいても外にいても生まれ故郷である島への想いは強くなるだろう。それが村として消滅の危機にあるならなおさらだ。
本作の主要人物は皆「島のため」を理由に我慢を強いられてきた。島への強い想いをいいことに逆手に取られているような感じだ。
誰かの代わりに誰かが我慢をするというのは、島のためを言い訳に辛さをどこか一箇所に集めるようなものだ。一つ一つは小さなことであっても溜まっていく澱は黒く濁っていくに違いない。
松山ケンイチの演技力もあって、純に濁ったものが溜まっていく様は面白かった。いつか爆発するに違いないとハラハラしてしまう。
増えていく死体、増えていく共犯者。秘密が増えることに生真面目な真一郎は耐えられず死を選ぶが、最期まで「島のため」という想いは貫いた。
「自分のため」を我慢し続ける男と「島のため」を貫く男。
誰もが我慢を強いられる中で、最も我を通した人物は結局圭太だったのではないか。彼は誠実に振る舞おうとしていたし悪人ではないが、ただ自分のやりたいことをやっていただけだったのだ。
ラストのシークエンスは説明過剰で少々残念ではあったけれど、サスペンスフルで面白かった。
というのは実はどうでもよくて、朝の島内放送が「バトル・ロワイアル」感が強くそれだけで面白かった。
増える死体のあと、三日目の朝のシーンを吹き出さずに観られるわけない。
「ちょっとペースが落ちてまーす。先生、残念です」の声が聞こえた気がした。いやいや、死体、増えてるからね。
こりゃまあ、藤原竜也を主演に据えるよね。
「ねえ、この意味わかる?」「そんなの全然わかんねーよ」ま、島のためですな。この連続。これだけで充分すぎるほど面白い。