「【うちにこもる】」ノイズ ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【うちにこもる】
なんか嫌な感じの映画だなと思った。
面白くないとかじゃなくて、不穏というより、嫌な感じなのだ。
かなり趣向は異なるが、昔見た横溝正史さんのミステリーのような、うちにこもる感じや、外者を嫌う感じもする。
横溝正史さんの作品だったら、中国地方の開発から取り残された山間部の村で起きた事件…って感じなんだろうけれど、日本が徐々に豊かになっていく中で作られた物語は、事件の暗さを更に引き立てていたように覚えている。
ただ、高度経済成長や田中角栄の日本列島改造を経て、日本のあちこちが表面的には豊かになった。
しかし、今、地方を暗くしているのは、海外生産を含む製造業の構造変化と、企業の市場を海外に求める姿勢、若者の転出による地方の人口減少と急激な高齢化・過疎化だろう。
この作品の公開10日ほど前のことだが、朝日新聞デジタルが、全国の過疎地域が、地方自治体の半分超になったことを報じていた。政府の地方創生の実効性は薄いのだ。
(以下ネタバレ)
この作品は、伊勢湾に浮かぶ過疎の島を舞台にしているが、残された島の人々は社会の変化にも取り残され、うちにこもり、過去の経緯で一部の若者を島に縛り付け、がんじがらめにしている感じだ。
僕は、ここに描かれた事件や、サスペンス感よりも、純の歪んだ心のうちを見せるエンディング、つまり逃れようのない、うちにこもらざるを得ない選択肢しかない地域が日本のここかしこにあるのではないかと気になってしまった。
もし、選択することが可能だったら、純も真一郎も、別の人生を選べていたのかもしれない。
残るのも、出ていくのも選択肢であるべきだ。
もし、若者に残って欲しいのであれば、既に残っている人々も、人任せにはしないで、自分たちの責任で、何をどうすれば良いのか考えて行動しなくてはならない時期に来ているのではないのか。
全て他人のせい、状況のせいにして良いわけはないと思う。
ましてや、義理や昔の恩で縛り付けて良いはずもない。
もう手遅れかもしれないという想いが、この作品で描かれた悲劇と重なる。
やっぱり、嫌な感じだ。
畠山が吐き捨てるように言った、廃れる地方の典型みたいな言い方が頭をよぎる。
やっぱり、嫌な感じだ。