「それなりにおもしろかったけど…」ノイズ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
それなりにおもしろかったけど…
予告で、殺人事件隠蔽の話であること、その首謀者を藤原竜也さん、松山ケンイチさん、神木隆之介くんが演じるということを知り、公開を楽しみにしていた本作。期待以上とは言いませんが、それなりにおもしろかったです。
ストーリーは、過疎に悩む猪狩島で、島の活性化の期待がかかる、イチジク農家の泉圭太が、娘を連れ去ったと思われる怪しい男を誤って殺してしまい、居合わせた幼なじみの田辺と守屋の三人でそれを隠蔽しようとするが、警察の捜査によりしだいに追い詰められていくというもの。過疎に悩む島という設定が、三人の青年だけでなく、他の島民をも巻き込む舞台装置として、よく機能していたと思います。(ちなみに、わが地元愛知県に猪狩島という島はありません。島の形からすると篠島ではないかと思います。)
この手の作品は、犯罪者側目線で描かれ、事件隠蔽のためにさらなる犯罪と裏工作を重ねる中で、観客も警察に追われる恐怖や緊迫感を味わいながら、悲劇的な結末を見届けるのが王道パターンだと思います。本作もその口ですが、ここに巧妙に仕掛けられたどんでん返しを加えたところがおもしろかったです。とはいえ、匂わせの強い伏線のおかげで、終盤に差し掛かる前あたりで気づけてしまうのは、いささかもったいなかったです。
タイトルの「ノイズ」は、島民にとっての殺人犯・小御坂だけでなく、町長部下にとっての町長、泉加奈にとっての島の閉塞感、守屋真一郎にとっての周囲の期待感、そして田辺純にとっての…と、実に多くのものを含んでいたのではないかと思います。そういう意味ではなかなかおもしろいタイトルで、自分にとってのノイズは何だろうと考えてしまいました。
主演の藤原竜也さんは、いつもの熱の入りすぎた演技は抑え気味にして、犯した罪と重ねる嘘に苛まれる姿が印象的でした。松山ケンイチさんは、その傍らで圭太に寄り添いつつも秘めた思いをもつ純をこれまた好演。そして神木隆之介くんは、この二人の幼なじみでもあり警官でもある守屋を絶妙なバランスで演じています。小御坂役の渡辺大知さんも、序盤で即退場となるものの、ヤバい犯罪者としてインパクト大。畠山役の永瀬正敏さんも、鋭い眼光の昭和風デカがハマっていました。他にも、余貴美子さん、柄本明さん、黒木華さん、伊藤歩さんら、豪華な顔ぶれが並びます。
ただ、これだけの俳優陣をそろえ、テンポよく展開し、飽きることはなかったのですが、なぜか今ひとつおもしろみに欠けました。企てがバレそうになる緊迫感や警察に追い詰められる恐怖が、思ったほど伝わってこなかったせいかもしれません。もっとひりひりするような緊張感や不安が味わえるとよかったです。ラストもちょっと意味不明で、面会室での二人のやり取りや絵日記の意味がわからず、モヤモヤして後味の悪さが残りました。あと、「前科者」に続けて鑑賞したのですが、保護司の描かれ方があまりにも違いすぎて、ちょっと戸惑ってしまいました。